研究紀要第59号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -003/053page
II 研 究 の 構 想
1 教育目標具現化の現状
教育目標は,学校経宮のかなめであり,学校のあらゆる教育活動を通して達成すべき教育の「指標」である。
各学校においては,教育目標に対するこの考え方が,すでに―般化され,教育目標達成に向けての教師の意識も向上し,具体的な教育計画の改善実施も,意欲的に進められるようになっている。
しかし,教育目標の重要性に対する認識や,目標達成のための研究への取り組みとは別に,教育目標が真にあらゆる教育活動の中に関連づけられて,教師一人一人の教育実践が行われているかどうかという点では,訪問調査の結果(資料編参照)からも,多くの問題が指摘されているところである。
つまり,そこには,教育目標に対する教師一人一人の意識の問題とか,学校の教育目標と各教科・道徳・特別活動の指導計画との関連の問題等,様々な問題が複雑にからみ合っているものと思われる。そこで,これらの教育目標具現化にかかわる諸問題を,次のように整理してみた。
(1) 教師の意識に関して
教育目標の設定とか,見直しを図る場合には,学校の協カ組織を生かした,全教師による真剣な取り組みが要求されるところであるが,現状は,それに反して,教師一人一人の主体的な参画がなされないこともあるために,教育目標に対する意識や,その達成意欲がもう一歩高まらなくなっているのではないだろうか。
そして更にこのことが,教育活動のすみずみまで,教育目標が浸透しない根本的原因になっているのではないかと思われる。
(2) 適切な実態の把握に関して
教育の諸計画を作成し実施する場合には,計画の内容に直接かかわる対象に対する実態の把握が欠くべからざるものであると考えられるが,教育目標に関しては,児童生徒の実態把握とか,学校の実状や地域の特性が的確にとらえられていないことが原因となって,教育目標設定の段階とか,教育課程実施の段階において,教育目標そのものに,学校の独自性が具体的に表われてこないのではなかろうか。
教育目標が,学校の置かれている現実から遊離した教育理念の表明にとどまっているとすれば,教育目標の形式化の一因となり,これが,日々の教育実践の形式化やマンネリ化を招くことになるように思われる。
(3) 教育目標の,全教育活動への具体化に関して
教育目標とその達成については,各校とも力を注いでいるところであるが,「教育目標はなぜ生きてはたらかないのだろうか」とか「授業で,教科の目標とともに,教育目標をどう生かし得るのか」などの問いかけが聞かれる。その原因を考えてみると,教育目標が,年次の重点目標を中核としながら,学年目標,学級目標におろされると共に,各教科・道徳・特別活動等の目標にまで,構造的におろされていないために,教育目標が学校の教育活動すべての中に,生きてはたらいてこないためではないかと思われる。
つまり,理念的,抽象的性格をもつ教育目標を学校の教育活動全体の中で,いかに有機的な関連性をもたせていくかについての,具体的,実際的な取り組みに問題があるのではないかと考えられるのである。
(4) 連続として機能する PDSP'に関して
福島県教育センター研究紀要第55号で,動態的経営観から教育課程経営を見直した場合,二つの観点からおさえることができるとして,次のようにまとめている。