研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -008/049page
(5) 「関心・態度」の評価の生かし方
評価の結果の生かし方で重要なことは,それを指導の手がかりにするということである。
(2)の1でも述べたように,「関心・態度」には,教科の本質にかかわるものと全教科に共通する学習態度的なものとがある。
1 教科の本質にかかわる「関心・態度」について
●単元・題材レベルの「関心・態度」の目標が達成されるまでには,その形成過程にいくつかの下位目標がある。そして学習を重ねることによって,それらは階層的に深化・発展すると考えられる。もし,下位目標が未達成の場合はすべての児童生徒に達成するように,即時的にフィードバックする。すなわち,未達成の児童生徒が,未達成のまま次の学習に進むことのないようにすることである。
●認知的,技能的な側面と密接にかかわり合いながら「関心・態度」は形成されていく。「関心・態度」の目標が未達成の場合,その背景にある認知的,技能的な側面の学力をチェックする。そして不十分な部分に対して補充指導する。
●より多くの児童生徒が未達成の場合は,再指導し達成を図るが,同時に指導者側に問題がないかどうか自己評価する。「なぜ関心・態度が育つ指導をしなかったのか」という発想からの指導法や指導計画の反省と改善を加えるようにする。
●本単元においてだけでなく,次の単元でも育てることができる「関心・態度」の目標が未達成の場合は,その原因を解明し,次の単元の授業において意図的に指導の重点化を図る。
2 学習態度的な「関心・態度」について
この「関心・態度」は,全教科に共通し,児童生徒が,主体的,自発的に学習に取り組む意欲や構えであり,学習の基盤として重要なものである。
●特定の児童生徒に問題が見られる場合,個別に観察や面接を行い,原因を解明する。そして助言指導などによって原因の除去に努める。
●多数の児童生徒に問題が見られる場合,指導のあり方を反省し,児童生徒の実態を考慮して授業の改善を図る。
●学習への興味や関心・態度は,教科の特質からだけでなく,指導者と児童生徒のかかわり合いの中で培われることも事実である。そこで,教師自身が指導力を高めるとともに児童生徒との望ましいラポートを確立しておくことが大切である。
最後に,指導要録の「皿観点別学習状況」欄の「関心・態度」の評価との関連であるが,この欄の「関心・態度」は,各教科の分析目標の観点の一つであり,教科の本質にかかわるものである。また,記入の時期が学年末であることからも,各教科が一年問という長期の学習指導で培う「関心・態度」である。それゆえ,「関心・態度」に関する学年末の長期的な総括的評価の結果に中心をおきながら,各単元・題材や各学期の「関心・態度」の評価結果を合わせて総合するなどして評定することが考えられる。