研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -016/049page
他の観点についても,それぞれ具体的な目標が設定される。
なお,「観察・資料活用の能力」及び「社会的思考・判断」などの能カ目標については,能カ育成のための年間や学期の指導計画によることになるので,指導の順序によっては,多少異なった目標となることもありうる。
(2) 「関心・態度」の形成過程と下位目標の分析
表2に示したような目標で表される「関心・態度」は児童の内面に一挙にできあがるものではなく,その目標がかかわる学習内容を追究する中で,認知的な側面との関係を保ちながら,一歩一歩深化・発展するものである(4ぺ一ジ参照)。
この深化・発展の過程を「関心・態度」の形成過程と呼ぶことにする。
1 教材の構造と「関心・態度」の形成過程
「関心・態度」というものは,具体的学習内容と離れてはありえないのであるから,その形成過程もまた学習内容やその構造に求めるのが至当である。従って,「関心・態度」の形成過程は,教材の構造を分析することによって明らかになると考えられるのである。
次のぺ一ジの図3は,小単元の教材構造を分析したものであるが,この図をもとに,小単元の目標の一つである「製鉄に必要な資源の確保とその有効な活用について興味を持って追究しようとする」という「関心・態度」の形成過程を考えてみよう。
この図の基本要素2は,上にあげた「関心・態度」の目標と不可分の関係にある。また,この基本要素は,具体的要素の「副産物の活用」,「水の大量使用」,「水の確保と再利用」,「鉄鉱石と原料炭の海外依存」などと直接に結びつき,「鉄の生産工程のあらまし」とも関接的につながっている。これらの具体要素のうち,上にあげた「関心・態度」を形成するために,最も効果的な教材は,次の一連の要素であると考える。
鉄の生産工程のあらまし ↓ 水の大量使用 ↓ 水の確保と再利用 なぜならば,「関心・態度」を効果的に形成するためには,児童にとって身近で,イメージを描きやすい教材を取り扱う場面で,重点的に指導することが必要だと考えるからである。小学校5年生という発達段階から考えるならば,「水」という物質が,「鉄鉱石と原料炭」あるいは「コークスを作る際の副産物」といったものより,はるかに親しみが持てるということは誰の目にも明らかである。
もちろん,「副産物の活用」,「鉄鉱石と原料炭」などの具体要素が,「関心・態度」の形成に無関係だというのではない。しかし,これらの要素については,認知的な側面における指導を重点とし,「関心・態度」については,補助的な役割とするのが適当である。
以上のことから,ここで問題としている「関心・態度」の形成過程は,上に示した具体要素にかかわる指導を展間する中にこそ存在すると考えるのである。
2 「関心・態度」の形成過程の構造と下位目標の設定
次に,「関心・態度」の形成過程自体の構造を分析しなければならない。
繰り返し述べてきたように,「関心・態度」は認知的な側面と互いに関係を保ちながら,「感じる・注意が向く」という低いレベルから「日常生活の中に行動化できる」というような高いレベルまで階層的に深化・発展するものである(5ぺ一ジ参照)。
もちろん,小単元の範囲で深化・発展させることができるレベルにはおのずから限界があり,11ページの図2に示すとおり,「社会的事象に