研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -019/049page

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「鉄を作るのに,どれだけ水を使うのか知りたいと思う」(下位目標2)というより高いレベルの「関心・態度」へ進むことができるのである。

 このように,「関心・態度」は認知的な側面における学習成果に誘発されて深化・発展し,逆に,「関心・態度」の深化・発展は,認知的な側面の学習の発展を刺激する。つまり,「関心・態度」と認知的な側面とは相互に関係し合いながら,低次なものから高次なものへと発展し,やがては小単元レベルでの両側面の目標達成へと進んでいくのである。

 教師は,このような「関心・態度」の形成過程の構造を明確に把握し,両側面に関する指導をかわるがわる進めるとともに,そこに設定された下位目標に基づいて適切な評価を行うことが必要である。

6 「関心・態度」の評価計画と評価方法

 目標が分析され,評価目標が明確になれば,次に行うべきことは,評価計画を立てることである。先に述べたように,主として評価しなければならないのは,「社会的事象に対する関心・態度」であるから,評価計画は,「関心・態度」の形成過程に即して立てられる。

 とは言え,授業に対する「関心・態度」の評価が不必要であるというのではない。「社会的事象に対する関心・態度」を育てるためには,児童が興味を持ち,喜んで参加できる授業が不可欠であり,そうした授業でなければ,「関心・態度」の土台となるような認知的な側面における学習成果を期待することは難しい。

 ここでは,表3,表4,表5(P20〜P22)に以上の考え方をもとに作成した三つの検証授業における評価計画を示し,それらに基づいて次のことに検討を加えたい。

 ●評価の機会をどんな場面に設定するか。
 ●評価用具としてどんなものを用いるか。
 ●評価段階をいくつにするか。
 ●評価基準をどのように設定するか。
 ●評価の結果を指導にどのようにフィードバックするか。

(l) 「社会的事象に対する関心・態度」の評価にかかわる計画と方法

 18ぺ一ジの図4に「関心・態度」の形成過程の構造分析の一事例を示しておいたが,表5(P22)は,この事例で取り上げた「関心・態度」にかかわる評価計画である。この評価計画に基づき,下位目標に関するものと小単元レベルの目標に関するものに分けて,評価方法上の諸問題を考えてみた。

1 下位目標に関する評価

 下位目標1〜4の評価は,授業の途中で,期待される「関心・態度」が育っているか否かのチェック・ポイントである。目標を達成しないまま次に進むことのないようにするためには,どうしてもこれらのチェックが必要である。

 まず,下位目標1の評価は,「製鉄所で使われている水に注意が向いているか」について,確かめようとするものである。この場合,直接水に注意が向いているかどうかを問うような評価方法は適切ではない。なぜなら,そのような場合,多くの児童は,教師が水に注意を向けることを期待していることを感じ取り,別な方向に注意が向いていても,「はい」と答えがちだからである。ここでは,より妥当性の高い方法として,「VTRをみて,きょうみをもったことは何ですか」と質問紙によって問い,記入の結果を直ちに挙手により確かめるというやり方を使う。水に注意が向いていない場合は,補説を加えることによりクラス全体の注意を水に向けさせるようにする必要があることは,言うまでもない。

 次に,下位目標2及び3の評価は,観察法によるものであり,評価段階はいずれも2個とした。概して,観察法という方法は,大変手間がかかるものであるので,実用性という立場から考えれば,評価段階はなるべく2個としたい。2個の場合は,(+)あるいは(ー)の児童だけを,座


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