研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -045/049page
が,この研究ではついに試みることができなかった。
●観察法及び自己評価法については,いくつかの試みが行われたが,これで十分であるとは考えていない。実施された方法が,評価目標に照らして最善であったかどうか疑問が残るところであるし,これらには,いくつかの具体的方法が含まれているにもかかわらず,試みられたのがそのほんの一部にすぎないからである。
●複数の評価法の組み合わせによる評価は,一例にとどまっており,方法が十分吟味されているとは言いがたい。
ウ 評価結果の生かし方について
●小単元レベルの評価結果の生かし方については,単にその方向性を示すにとどまり,実践的なうらづけを得るには至らなかった。
エ その他
●この研究は,一小単元を取り上げたものであるから,単元,学期,学年などのレベルでの「関心・態度」の評価には手が及ばなかった。
この研究は,「関心・態度」の評価の在り方について,ある程度の示唆を与えうると信じている。
しかし,上に述べたように問題点も少なくない。今後の実践的な研究の成果が待たれるところである。
む す び
本研究は,評価の機能を学習指導の実際に生かし,授業の質的改善・充実を図るという指導と評価の一体化を目指して取り組んだものであり,第2年次に当たる本年度,及び第3年次の研究主題を「関心・態度」の評価として研究を進めてきた。
本年度は,まず,研究主題設定に当たって,「関心・態度」の評価が,重視されなければならない背景について,研究プロジェクトチーム全員の共通理解を図り,次に,研究を支える「関心・態度」の評価に関する基本的な考えを,次に掲載した参考文献等を基に理論研究を行い研究の基盤を確立した。更に,当教育センターの学習指導に関する研究の特色でもある実践研究の手法にそい,研究推進の基本的な考えを,実際の授業をとおして追究していく検証授業に取り組んだのである。
本紀要は,本年度の研究内容を整理しまとめたものであるが,「研究のまとめと今後の課題」でも述べたとおり,研究成果としてつかみ得たものよりも,むしろ,研究推進の過程でほりおこされた問題点で,今後に残された課題の方が多いようにも思われる。しかし,本年度小学校社会科を研究教科として取り組んだ「関心・態度」の評価の考え方,授業の実際,開発を試みた評価法などは校種や教科の違いはあっても,教育現場の教師一人一人の実践の一助になるものと確信するものである。認知的側面に対し「関心・態度」は,児童生徒一人一人の情意にかかわるものであるだけに,学習指導の実際においては,教師一人一人の意欲的な取り組み・創意・工夫が望まれるのである。ここに,「関心・態度」の評価の難しさもあると思われるが,本紀要が,実践上の難しさを解決する手がかりとなれば幸いである。
研究最終年度の第3年次は,本年度の成果と課題をふまえ,中学校教科をも研究教科として,更に実践研究を進めていく計画である。教育現場よりの厳しい御批正と実践をふまえた意見を切に願うものである。