研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -044/049page
9 研究のまとめと今後の課題
第2部においては,第1部に示された研究のための理論を社会科に具体化するとともに,小学校5年の一つの小単元を取り上げて,「関心・態度」の評価の在り方を追究してきた。
(1) 明らかにされたこと
ア「関心・態度」の意味と目標設定について
●社会科の学力の一要素としてのr関心・態度」とは,社会科における学習対象そのものに向けられるものであって,指導方法や学習形態などに向けられるものではない。この点をあいまいにすると,評価目標の設定や評価方法の選択を誤ることになり,ひいては「関必・態度」を育てていくことが難しくなる。
●「関心・態度」は認知的な側面と相互に誘発しあいながら,低いレベルから高いレベルヘと階層的に一歩一歩深化・発展するものである。
●「関心・態度」の目標は,ひとまとまりの学習内容に即して設定されるものであり,そうして設定された目標は,その形成過程の構造に着目して,より具体的なものにくだかれ下位目標が設定される。
イ「関心・態度」の評価の仕方について
●上のようにして設定された目標は,そのまま評価目標となり,それらは指導過程の中に適切に位置づけられなければならない。
●「関心・態度」の評価方法には,大別して,観察法,自己評価法及び相互評価法があるが,そのうちどれを選択するかは,評価目標に照らして,妥当性,信頼性が高いかどうかを考慮し,実用性の面からも十分検討して決定されなければならない。
●観察法によって「関心・態度」を評価する場合は,あらかじめ評価基準を明確に定め,それぞれの評価基準に対応する行動のリストを準備しておくことが大切である。
●質問紙によって,自己評価をさせるときは,児童の心理の動きに十分に考慮して,設問を工夫することが大切である。
●作文を用いて,自己評価をさせる場合は,期待する記述を示唆するような指示をしないように気をつけなければならない。簡単な指示によって,「関心・態度」の実態をありのままに記述させるためには,日ごろから作文に書くべきことを指導しておくことが大切である。なお,作文記述から「関心・態度」を的確に把握するには,評価基準に即して,作文記述のリストを準備しておくとよい。
●いずれの評価法も決して十分ではない。従って,適宜複数の評価法を組み合わせるなどの工夫が必要である。
ウ 評価結果の生かし方について
●下位目標の評価は,即時のフィードバックを行うためのものである。大事なことは,未達成者をそのまま置きざりにしないことであり,未達成者に対する手だては,指導計画に明確に位置づけられていなければならない。
●ひとまとまりの学習内容に対応する小単元レベルの目標についての評価結果は,認知的な側面における評価結果と個別に照らし合わせることによって個別指導のあり方を決定するための資料となる。また,教師の指導について反省する資料とまなり,授業の改善に役立てることが大事である。
(2) 今後の課題
ア 「関心・態度」の目標について
●この研究で行われた目標分析は,小学校5年の一小単元のものであり,しかも「関心・態度」の形成過程の構造を踏まえた下位目標の分析は,その中の一事例を取り上げたものにすぎない。従って,この研究で示した目標,分析の手法が普遍的なものであるとは断言できない。
イ 「関心・態度」の評価方法について
●相互評価法は,「関心・態度」の評価には極めて有効適切な方法であると言われている