研究紀要第61号 「生徒指導に関する研究」 -039/043page
相手に同情するという寛容・寛大な心情はみられるとしながらも,不適応状況を示す児童生徒が半数以上もいると指摘している。
これらのことから,学校においては,集団への適応に問題があり,家庭では,家族への思いやりが乏しい子供が存在すると言える。
このような実態から,望ましい情緒の発達を図るためには,家庭における適切なしつけと,学校における望ましい集団生活への適応及び思いやりの心を育てる指導が,今後ますます重要視されなければならない。
● 洞察力
家庭生活において,保護者の大部分は,子供は,見通しをもった生活ができるとしているが,児童生徒及び教師は,必ずしもそのようには評価していない。
特に,中学生には,自己の適切な判断に基づく,計画的な生活や学習ができないと自己評価している者がかなりいる。中学校の教師もまた,それを指摘しており,次の衝動性についての調査結果にも,このことが表れているとみることができる。
そこで,ねらいや価値観を明確にもち,その達成を目指して,計画・実践化を図る指導が大切である。
2 耐性の阻害特性からみた児童生徒の実態
● 衝動性
衝動性についての調査は,児童生徒にだけ実施した。学校生活における,この一設問だけから考察することの危険性はあるが,児童生徒には,理性的に判断することや反省することをしないで,軽率に行動する傾向がみられ,自己の要求・欲求を抑制できず,衝動的に行動する児童生徒がかなり存在すると言える。
したがって,これらのことをふまえた指導もゆるがせにできないことである。
● 自己防衛
家庭生活において,逃避あるいは自己主張などの要因から,自己防衛にっいて調査したが,小学生・中学生とも,比較的望ましい結果と言える。
しかし,中学生には,他に責任を転嫁したり,自分の体面を保つために,自分の都合がいいように合理化したりする傾向がみられるので,これらを配慮した指導が望まれる。
● 目標・価値観の喪失
設問の内容によっても違いはあるだろうが,この調査結果では,目標を明確にもっていない児童生徒がかなりみられ,特に,中学生にその傾向が強い。
このため,確かな目標をもち,積極的に参加しようという意欲や態度となって表れず,耐性を阻害する一因になっていると考えられる。
したがって,目標や価値観を正しくもたせることが,耐える心をはぐくむことにつながるものと思われる。
3 「しつけ」に対する保護者の意識
家庭教育の基本とも言える「しつけ」の中で,最も重要視されるがまんするということに対して,小・中学校のいずれの保護者も,大部分が「厳しくしている」という意識をもっていることが分かる。
しかし,これまでの調査結果からみると,具体的な実践面においては,果たして厳しくしているのか,あるいは,子供自身そう受け止め,実践しているかについては,疑問であるが,今後は,親のしつけと子供の実践に一貫性のあることが,より望まれるところである。