研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -016/049page
事 例1 (小学校 1)
自宅,近所の家から盗みをした事例
1. 主訴 盗み
2. 対象 小学校4年 男子
3. 問題の概要
小学校1年の3学期,兄の財布から3回ほど小銭を盗み取り,プラモデルを買った。これが初発の盗みの行為である。その後2〜3年生にかけ,上級生にそそのかされて1万〜1万5千円を,友達の家から2〜3回盗み,ゲームセンターなどで使った。その間,警察にも補導された。
4年生になってからは,母の財布,親戚宅,近所の留守宅,そして車上からなどと,お金盗みがエスカレートしている。取ったお金は使わずに自宅の車庫や神社の床下に隠したりしている。
4. 資料
ー生物的次元ー
● 身体症状
小学校3年の6月ごろから,頭痛,腹痛,だるさ,それに朝の目覚めが悪いなどの訴えがあった。小児科医師により「身体に異状はなく,心因性の症状である」と診断された。
ー心理的次元ー
● 習癖
小学校3年の初めごろから指しゃぶりが見られるようになり,現在もなお続いている。
● 知的発達
学業成績は低学年から現在まで「中位」ではあるが,年々下降気味である。
● 対人関係
仲のよい友達が少ない。正視しないで話す。気に入らないとふて腐れた態度で人と接する。
● 性格・情緒
外向的ではあるが,わがままで強情である。耐性が弱く,神経質である。飽きやすく,落ち着きがない。
ー社会的次元ー
● 家族構成
● 家族関係
本人が末子であることから,両親,特に父親は本人の気ままな生活態度を容認し,けじめのない態度で接していた。母親は,すなおで学習成績のよい兄と姉をかわいがり,多動で学習成績のふるわない本人を,兄や姉と比較して,ないがしろに扱うことが多かった。したがって,本人は兄や姉と遊ぶことが少なかった。本人は父には甘えたが,母に甘えることは少なかった、
父が別居した3年生からは,家の中では母や兄,姉に対して言葉が乱暴になり,反抗的な態度が見られるようになった。
● 両親の養育態度
上図に見られるように,両親は理性や道理あ