研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -037/049page

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● 家族成員の性格と養育態度

  祖父は,生真面目で,厳格である。本人を小学3年ごろまでは非常にかわいがっていた。現在は,本人の行動を責めたてており,本人と不仲である。

  父は,世間体を重んじ,自分の考えを示すことが苦手なタイプである。時折,本人を叱るだけで,積極的に触れ合おうとはしない。本人も父を嫌っており,ほとんど口をきかない。

  母は,人間関係に淡白であり,また,物事を自己中心的に考える傾向がある。本人に裏切られていると思っており,僧しみを抱いているため・とげがある話しかけが多い・本人も必要以外母に近寄らない。

  両親とも,本人をやっかいばらいしたい気持ちは同じであるが,互いの養育態度には不満を抱いている。

● 教育に対する関心

  両親とも教育に対して関心が高く,本人の一流高校への進学を目ざし,本人が小学3年から中学1年まで,主に,父が勉強を教えていた。また,学習塾にも通せていた。さらに,中学23年時には,受験のため,家庭教師をつけていた。

ー実存的次元ー

  尊敬する人物はいない。両親や学級担任を小学3年ごろに嫌いになった。現在は,大人や学校に不信感を抱いている。

  将来については,夢がなく,高校進学にも消極的であった。

5. 診断

 多次元診断マトリックスを基に,次のように考 7.えられる。

 旧家に初孫として誕生したこと,また,祖父母の権限が大きいため,祖父母が養育の中心となり父親,母親の役割が十分になされていなかった。

 祖母の死後,養育の中心となった両親は,長男に期待をかけ,勉強を強制したが,期待通り,学習成績が向上しなかったため親子関係にひずみが生じ,現在に至っている。

 親子関係のひずみが,本人の心理的負担となり身体症状を呈した。さらに,人間不信につながっている。

 学校では,本人の生活態度を怠学傾向だけとみなし対応していたため,本人との話し合いに深まりがみられなかった。そのため,本人の学校不信をまねいている。

 また,付和雷同的な父親が男性モデルの役割を果たしていない。

 すなわち,本人の問題行動は,性格的に神経質で軽卒さなどがみられることや将来に対して希望がないことから現状認識が甘い。そのため,身体症状や人間関係からくる情緒的不安定さを合理的に解決できないための行動である。

6. 指導仮説

 主な指導事項は
 (1) 身体症状をなくす
 (2) 情緒の安定をはかる
 (3) 親子関係,学校関係の調和をはかる
 (4) 将来について考えさせる

 すなわち,身体症状が消失し,親子関係,学校関係が改善されれば,情緒的な安定がはかれる。

 また,将来について,自分を見つめることができるようになれば,現在,自分が置かれている立場が理解でき,行動面で慎重さが生まれている。

その結果,問題行動が改善されるものと考えられる。

7. 指導援助の経過

 (1) 身体症状に対して

  ・医療機関との連携身体症状の改善をはかるため,医療機関


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