研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -039/049page

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注意される。にくらしい!!」

    他者への批難を憎悪をこめた表情で話していたが,回を重ねるごとに悪口は少なくなってきた。

  ・ 運動療法

    バドミントンを1対1で実施した。始めは,ラケットをめちゃくちゃに振り回して一人で興奮していたが,徐々に落着いてきた。その後,ルールを定め,試合をした。負けると感情的になり,ルールを無視することがあったが,次第にルールを守り熱心に練習するようになった。

 (3) 親子関係の調和をはかる

  ・ 交流分析
    (母親から本人への話し方の改善)

   今までは
   本人「ただいま,ハラヘッタな一
   母親「何よ〃今ごろ帰ってきて!!」
   本人「ウルセー,このババー!!」

    このような事から,いつも言い争いになっている。そのため,まず,保護的な親の自我状態で対応するように勧めた。

   例えば
   本人「ただいま,ハラヘッタなー」
   母親「おかえりなさい。はいはい,今おいしいものを用意してあげましょう。」

    このような対応を続けていくうち,本人から,母親に話しかけてくるようになり,笑顔を見せるようになってきた。

  ・ カウンセリング
    (両親の本人に対する見方の改善)

  父「あんまり,期待し過ぎていました。かわいそうなのは,あいつですね。自分も仕事,仕事といって,すべて,母親まかせにしていたのが悪かったのかも知れません。」
  母「最近,かわいくなりました。あんまり口やかましいと,いやになるのは,当り前ですね。」

 (4) 学校関係との調和をはかる

   学校とは,本人の問題行動について,共通理解をはかった。

   次第に担任との会話にも抵抗を示さなくなってきた。

 (5) 将来について考えさせる

  ・ カウンセリング(8回目〜12回目)

    「退学を勧められたが,卒業だけはしたい」
    「今年,進級できなかったら,休学してでも来年がんばりたい。」
    「将来は,自動車関係の仕事をしたい。」
    「家は離れたくない。家はいいよ。」
    「おやじは,最近,仕事が忙がしく,毎日遅いんだ。大変だと思うよ。公務員は安月給でね。」
    「俺は,人に使われるのが嫌いだから,将来は自分の店を持ちたいよ。」

8. 考察

 1ケ月後に,身体症状が軽減した。以前からの交友関係はまだ続いているが,帰宅時間は早くなった。

 親子関係が良い方に向かい,両親との会話も増えてきたし,学級担任にも心を開き始めてきた。

 将来については,ばくぜんとであるが,方向が見え始めてきたし,卒業への意欲も持ってきた。

 また,遅刻,早退,欠席が少なくなってきており,バイク窃盗に類する行為は見られない。



 まだ,問題行動全部が改善された状態ではなく親子関係,学校関係も十分良いとは言えない。そのため,今後,さらに,同様な方針で援助して行く必要があると考える。


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