研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -046/049page

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問題が消失してしまう場合があるので,その事実が心理療法の成果であるという検証がしにくいのである。

 しかしながら,教育相談を意図的に進めていく以上,心理療法の効果を厳密に評価する必要がある。心理療法の効果については,その反社会的行動を診断して指導援助の目標をたて,それを達成するプログラムを作成し,選択した心理療法を用いてプログラムの通りにその問題が改善・解決した場合に限って認めるのが妥当とされている。

 本研究の事例は,このことの評価を加えた上で提示した。

 (4) 指導援助者のこと

 反社会的行動をもつ児童生徒は,家庭,学校あるいは社会に対する不適応感から,仲間集団やごく一部の人を除く人々との人問関係に問題を示すことが多い。そのため,一方的な価値等を押しつけようとすると,かえって反発,反抗を招くことにもなる。教育相談にあたっては,指導援助者がまず,その児童生徒を十分に受容し,共感的理解を深めて,望ましい指導援助の関係をつくりあげる努カをすることが大切である。

 また,反社会的行動は,社会の倫理への反抗でもあるのであるから,教育相談を効果的に進めるには,指導援助者自身の自己一致した言動が必要である。教育相談にも,指導援助者自身に課せられた条件があるようである。

 一般に反社会的行動は,「非行」という言葉に置きかえられる。当教育センターにおいては,反社会的行動をもつ児童生徒とは,「児童生徒の行為や行動の一部に問題を持つのであって,その児童生徒のすべてが問題なのではない」と理解している。その意味で,「非行」という児童生徒の存在を全面的に否定するような用語の使用を極力避けるようにしている。このことも,指導援助者の大切な「子供観」であろう。

8. 第2年次の計画

 本研究の終局のねらいは,反社会的行動をもつ児童生徒への指導援助に限らず,広い意味で問題行動の発現を予防し,教育現場でさらに充実した生徒指導や教育相談が実現できるようにすることである。それには,児童生徒の問題行動を十分に理解することが必要である。第2年次の研究は,事例研究の集録を予定している。

 このことを通して,よりすぐれた教育相談が可能になるよう努カする。


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