研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -045/049page
教育相談の流れをフローチャートに表すことの適否は別にして,上のフローチャートはあくまでも一つのモデルである。ここでの望ましい教育相談とは,反社会的行動をもつ児童生徒が指導援助を受け入れ,自らその行動を改善していくようになるかどうかである。教育相談の流れをフローチャートに表すことによって,強調したいことは,指導援助にあたりながら反社会的行動の改善・解決がみられない場合は,なるべく早く必要なところヘフィードバックするということである。
そして,一連の流れに沿って幾度か繰り返しが行われ,フィードバックが図られてもなお,反社会的行動の改善・解決が果たされないのは,
1 心理的療法の選択や組み合わせの誤り
2 他の機関で指導援助すべき事例
3 指導援助者の指導理論の把握の薄弱あるいは技術の未熟
4 指導援助者のパーソナリティもしくは人間性の問題
などの理由によるようである。
また,指導援助の継続にあたっては,絶えずすぐれた指導援助者とコンサルテーション関係を結ぶか,スーパーヴィジョンを受けながら進めていくとよい成果が生み出されるようである。当教育センター教育相談部でもこれを実行している。
(3) 心理療法の選択とその効果
診断に基づく指導仮説によって,その問題の改善・解決のために最も適合する心理療法の理論と技法を選択する。反社会的行動に対する心理療法は多岐にわたっているが,多くの場合いくつかの心理療法を組み合わせて,それを決定する。
心理療法の選択にあたって,当教育センター教育相談部は,児童生徒の年齢,性別,問題の性格や程度等に合わせて心理療法を選択するいわゆる折衷主義の立場をとっている。それも積極的な折衷主義である。すなわち,事例で明らかなように児童生徒と深い信頼関係を結ぶために来談者中心療法,資料の収集にはカウンセリングや特性・因子理論等,診断のためには主として精神分析的理論,あるいは交流分析理論や家族システム論,そして実際の指導援助にはカウンセリングと行動療法を基本にして交流分析,ゲシュタルト療法,家族療法,それに当教育センター教育相談部独特の運動療法等,問題行動の改善・解決を図るのに最も効果的と考える理論と技法を採用して教育相談にあたっている。
ところで,心理療法の効果であるが,これは容易にとらえにくいのが実状である。反社会的行動は発達期に存在する児童生徒の問題であるので,確かにその問題が改善・解決されたことが明白であっても,時問の経過,あるいは他の人々の働きかけによって偶然,もしくは自然なかたちでその