研究紀要第63号 「教育課程の実施に関する研究」 -018/093page

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3.自然事象の探究においては,児童が意欲的に問題解決への探究を進めても,その条件制御が困難なものが多く,児童が直観的に発想したことも解決させてやれない場合があり,学習内容の認識の段階で,飛躍した事象を教えこむことが多い。
 たとえば,ロウソクが燃えるには「空気が必要である」と言えば,「空気がなかったら燃えないか?」と児童は直観的に発想するのが普通であろう。しかし,空気のない条件を児童が簡単につくることはなかなか困難である。

 これまで述べた諸問題を解決するため,児童の身の回りにある,身近な素材を活用した教材・教具を開発し,これを使用することで児童に驚きを持たせることから学習が発展することに意を用い,安価で,安全で,手軽に多量つくれて,児童自身の使用できるものを自作することに努めた。さらに,これらを使用するにあたっては次の点を考慮することに心がけた。

1.日常生活の中で,今まで見たり触れたりしてきた身近なものが教材として利用され,別な働きをすることを見せることは,児童にとっては大きな驚きをおこさせることになり,それが興味・関心を高め,意欲的な学習を進められるようになる。

2.学習の個別化を図ることの必要性を考慮し,安価で,安全で,手軽に作れる教材を用い,児童一人一人に主体的にとりくませ,自主的・体験的に自然の事物・現象を探究させることに努める。更に,より深く自然を調べる能力や態度を育成するように努める。

3.児童自身の直観的な発想による解決策を,自ら観察実験して探究できるよう配慮し,学習の成熟感や達成感を十分得ることができるようにする。
ここでは,以上の点を配慮し,次の3つの例をもとに,その方法について述べることにする。
A.使い捨て注射器を用いた電磁石づくり
B.手巻きコイルを用いた着磁・消磁器づくり
C.使い捨て注射器を用いた簡易真空ポンプづくり

 これらは,いずれも特別な用具などを必要とせずに,身近にあるものを用いて安価につくれるものであることから,多くの学校で活用できるものと考える。

III 自作教材の開発例
A 使い捨て注射器を用いた電磁石づくりとその指導
1.電磁石に関する問題点と改善方策

(1)現在までの電磁石づくりの問題点
 小学校6学年理科に「電磁石づくり」の指導教材があり,電流と磁界に関する基礎的な科学概念を習得させるようになっている。しかし,現在多く用いられている電磁石のつくり方は右図のようになっている。
 このように,鉄くぎを軸としたコイルを直接に電池に接続すると,結果的には電池の両極をショートさせた状態となり,大量の電流がコイルを流れ,磁力は強いが,短時間で電池が消耗してしまい,児童が何度もくり返して探究することができなくなる場合が多い。
 また,鉄心をぬくことができないため,鉄心
現在多く用いられている電磁石のつくり方


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