研究紀要第63号 「教育課程の実施に関する研究」 -033/093page

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(1) 授業案

第2学年 道徳学習指導案

              昭和60年12月10日(火)第3校時
               福島市立瀬上小学校 2年2組にて
                  指導者   渡 部 悦 夫

1.主 題 名   泣いた 赤おに

2.主題設定の理由
 本主題の中心価値は,「信頼・友情」である。すなわち,友達は互いに信頼し合い,仲よく助け合うという内容であり,特に,低学年では,(友達と仲よく助け合い励まし合うこと)が重点となる。
 また,ほかにも幾つかの関連価値が認められるが,中心価値とほぼ同等なレベルにある価値として, 「親切・同情」を考えておきたい。この内容は,だれにでも親切にし,弱い人や不幸な人をいたわるということであり,低学年では,(友達や自分より幼い人に対して親切にすること)が重点となる。
 この期の児童は,すなおであり,人間本来の姿を感覚的にとらえる力は鋭いものがあると思われる。しかし,友情や親切のような人間が人間らしく生きるための条件ともいうべき価値を把握させるにあたっては,人間の心のやさしさや美Lさに感動することよりも先に,行為そのものの善悪を全体的,直感的にとらえる傾向が強いものと考えられる。
 また,この期の児童の一般的な友人関係は,1年生のころに比べると,学級の1人1人について,自分なりの見方で知ることを増し,好き嫌いなども芽生えてくるものである。けれども,中学年以上の児童に見られるような相手の気持ちを思いやるといった感情はまだ未発達であって,自己本位の行動が依然としく強く,ささいなことでけんかをするなど,自分の欲求や利害関係での結びつきだけが多く見られるといえる。
 従って,指導にあたっては,資料の主人公の奥底に流れる心情を探る目を育てることを目指すとともに,主人公のように,やさしい心や美しい心を持ちたいという,あこがれにも似た感情を掘り起こすため,児童の心に強い感動を与えることが重要と思われる。
 なお,やさしい心や美しい心をすなおに受け止め得たとしても,それが表面的な把握であり,自分の生活に置き換えることができない状態,いわゆる価値の主体的な自覚にまで深まらなければ,生きて働く力ともいうべき,道徳的実践力とはなり得ないと考えなければならないであろう。
 そのため,本資料の主人公の行為や,それを支える心情よりは,やや低い次元で考えさせ,児童が自分も主人公に似たやさしい心や美しい心を持っているのだという自覚をさせたいと考える。
 このことが基盤となって,今後の生活の中で,友情や親切を大事にしていこうという心情や意欲の高まりを期待できると思うからである。
 本資料は,浜田広介の童話であるが,副読本などの道徳の資料ではなく,絵本に付いていたレコード盤からテープに録音したものである。
 したがって,2年生の資料としては,かなり長い物語であること,しかも,主人公が人間ではなく鬼であること,それに,自己を犠牲にしてまでも貫こうとする崇高なまでの友情や親切の姿であり,現実離れした行為や心情でもあることから,児童に理解させるにあたっては,相当難しいことが予想される。
 しかし,いじめなど児童生徒の問題行為が大きく取りあげられ,児童の関心も高まっていること


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