研究紀要第63号 「教育課程の実施に関する研究」 -038/093page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 青おには 赤おにの 手をひっぱって どんどん 村のほうへ あるきだしました。
「いいかい。これから ぼくが あそこにある お百しょうやに とびこんで 大あばれをする。きみは あとからやってきて ぼくの あたまを ポカポカ なぐれ。」
「ええっ,きみをなぐるのか。」
「そうだ。なぐれば いいんだ。わかったな。」
 そういうと 青おには もう 村へむかって はしりだしていました。
 二つ三つ しんこきゅうをしてから 赤おにが お百しょうやへ 行ってみると 青おには もう 大あばれの まっさい中でした。
「ええい,こうしてやる。どうだ。ウワッハッハッハッ。」「ああ 青くん。」
「おお きたか。さあ はやく なぐれ。」
「なぐれっていったって。」
「ぐずぐずしないで はやく。」
「じゃ やるよ。こ こらあ ポカン。」
「まねじゃだめだ。ほんとに なぐれ。」
「それじゃ えーい。」
「いたい。イタタタタ いたい いたい いたい いたい。」
 青おには,あたまを かかえて にげていきました。
 それまで とおくから おそるおそる 見ていた 村の人たちは はっとして てんでに はなしはじめました。
「おい 見たか。」
「見た。見た。たしかに見たぞ。わるい 青おにを あとからきた 赤おにが ポカリ。」
「うん。わるい 青おにを やっつけてくれたんだから あの 赤おには いいおになんだな。」
「ん。そうだ。そういえば いつか おかしを ごちそうするって たてふだを たてたのも。」
「そうだ。あの 赤おにさんだ。」
「あの 赤おにさんなら あんしんだ。」
「ひとつ おちゃを ごちそうになりに 行こうじゃないか。」
「うん。」
 ひとり ふたり 三人,五人,それからというもの,赤おにの いえは まい日 おきゃくで 大にぎわいです。

(歌)
おにじゃ おにじゃと いうけれど こりゃ
 赤おにさんは いいおにじゃ
あたまの つのも よく見れば こりゃ
 かわいくって おつなもの

 赤おには もう まい日が たのしくて おもしろくて たまりません。
 あまりの たのしさに ひと月ほどが またたくまに すぎてしまいました。
 けれど 日がたつにつれて 気にかかることが ポツンと一つ 心のすみに とりのこされていることに 赤おには 気づきました。
 それは,あの 青おにのことでした。
「ああ,青くん。まい日が あんまり たのしくて 青くんのこと すっかり わすれてた。このごろ ちっとも あそびに こないけれど どうしたんだろう。」
 そう思うと 赤おには きゅうに 青おにに あいたくなりました。
 そこで
『きょうは 一日 るすになります。あしたは います。   赤おに』
 と かいた かみを いりぐちにはると さっそく くもにのって 青おにのいえへ でかけました。
 たかい いわ山の 上にある 青おにのいえは,まるで だれも すんでいないように ひっそりと していました。
 ふと見ると いりぐちのよこに はりがみが してありました。
「ああ これは 青くんの じだ。」
 赤おには 青おにの 手がみを よみはじめました。
『赤おにくん。村の人たちとは なかよく つきあっていますか。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。