研究紀要第63号 「教育課程の実施に関する研究」 -043/093page

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3.考  察
(1)導入のあり方について

 教科の授業だけでなく道徳の授業においても,導入が重視されるようになってきているといえる。
 特に,道徳の授業は1時間扱いが多いため,できるだけ短時間でねらいとする価値への方向づけをしなければならないからである。
 導入を含めた指導過程については,基本型と呼ばれるものが数多く提唱され,実践されているが,大きく次の二つにまとめることができる。
1 生活→資料→生活
2 資料→生活
 ここでいう生活とは,児童の日常生活における経験や問題などのことである。
 従って,導入に限って考えてみると,最初に生活経験などを取り扱うか,それには触れないで単刀直入に資料を扱うかの違いということになる。
 1の生活からの導入を更にくわしく考えてみると,事前に学級の児童の生活の実態や意識について調査し,その結果を集約して提示するなどのように生活経験などの比重が大きい場合と,その場で少数の児童に生活経験を述べさせるというように比較的軽く取り扱う場合とに分けられる。
 本時の導入は,2のように,中心資料から直接展開することも考えたが,2年生であるため,生活から行った。
 すなわち,低学年の児童は,資料(特に物語など)に没入してしまい,その世界から抜け出せなくなってしまうことが多く見られるので,それをさける上から生活からの導入としたのである。
 ただ,生活からとは言っても,資料への橋渡しだけを考え,ごく簡単に友人に親切にしたことや親切にしてもらったことを2,3発言させてみただけであり,時間的にもごく軽く取り扱ったにすぎない。
 私としては,児童が「友達」を意識したこと,資料ヘスムーズに結び付いたことなど,効果があったと考えている。
 次に,参観した授業の中から導入の様子を紹介してみる。

<生活からの導入>

    門田小学校 4年 斎藤ヒロ子教諭

―雨の停留所で―(規則の尊重)の指導から
○本時のねらい
 きまりや規則が必要なわけを知り,進んできまりや規則を守ろうとする意欲を高める。
○導入時の提示資料 〜模造紙〜
 学校では,休み時間に教室を走って遊んではいけないことになっています。しかし,友達の中には,教室の中を走ったりして遊んでいる人もいます。
(1)注意してみると思う。・・・22人
(2)自分も走って遊ぶと思う。・・・10人
(3)きまりを守るように話し合う。・・・4人
(4)先生に注意してもらう。・・・3人
(5) 知らんぷりをする。・・・1人

 「この表は,『廊下や教室を走る友達を見た時,どうしますか』と,たずねた時の答えをまとめたものです。」ということで,黒板に提示し,特に,(2),(4),(5)について児童の考えを聞いていった。
 (1),(3)と答えた児童であっても,実際は行動に結び付いていないことに気付かせることによって問題意識を高めるのに役立ったと思われる。
 また,「今日は,なぜきまりがあるのか。きまりや規則はどうして守らなければならないかについて『雨のバス停留所』というお話で考えていってみましょう。」と途切れることなく中心資料へと展開していった。
 児童に提示した生活の実態は,調査のごく一部であり,実際はそれぞれの理由などについても把握されていたこと,バスに乗る順番を守るという資料の内容が児童にとっては特別な規則の尊重の一つであることをふまえ,学校生活の身近な実態だけにしぼって提示されたことなど,斎藤教諭の工夫が効果をもたらしたものと考える。 このように,生活からの導入は,児童にどのような道徳的な問題を考えていくことになるかにつ


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