研究紀要第63号 「教育課程の実施に関する研究」 -047/093page

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いであろうが,高学年の児童や中学生であれば
 ア.人間が鬼に対して偏見を持っていること。
 イ.友達のためとはいえ,暴力をふるったこと。
 ウ.青鬼も赤鬼も村人によく説明すべきこと。
などについて,討論させることができよう。
4 共感資料としての活用
○ 主人公の考え方,感じ方に共感させ,価値についての自覚を促すという意図で活用する。
○ 次の様な発問が考えられる。
 ア.主人公は,どんなことを考えているか?
 イ.主人公の気持ちは?
※ 赤鬼が村人と仲よくなりたいこと,青鬼の助けで村人と仲よくなり喜んでいること,手紙によって知った青鬼が友達思いであること,青鬼を失った赤鬼が悲しんだり,自己反省をしていることなどのそれぞれに対して共感させていく。

 以上のような4つの類型は,それぞれが独立Lて活用されるとは限らず,交互に活用される場合もあろう。
 いずれにしろ,このような方法で資料を見つめ直してみることが重要なことであると考える。

(4)全般的な反省などについて
 私は,児童に道徳的価値観の形成を図る上で,最も有効に働くのは,感動体験を与えることであると考えている。
 従って,本時の指導においても,児童が物語のあらすじをできるだけ短時間で把握するように努め,その後で,青鬼が自分を犠牲にして遠くへ去った時のさびしさやつらさ,赤鬼が青鬼の手紙を読んで,自己をふり返り,青鬼を思いやって涙した時の悲しさやわびしさを掘り下げていく過程で聴覚や視覚に訴えながら,児童の心に深い感動を味わわせたいと願った。
 すなわち,「青鬼は自分と同じようにつらかっただろうなあ」「赤鬼も自分と同じように悲しかったことだろうなあ」というように,児童が自分自身の心情を主人公の心情とオーバーラップさせながら追体験をしていくことで,主人公である赤鬼や青鬼に対して,心をゆり動かし感動をもつと考えたのである。
 授業を終えて後の児童の感想の中に,「〜青鬼くんがかわいそうで涙がジワッと出てきました〜」「青鬼は自分を犠牲にしてまで友達を思ったのはすごいなあと思いまLた〜」「〜どちらもいい鬼さんです。特に,赤鬼さんのポツンと残った心がよかったです〜」「〜赤鬼は自分のことだけ考えていたようだけど,青鬼を思い出したこと,手紙を読み悲しんだことで,とても友達思いだなあと思います〜」「〜聞いていて涙がポロリポロリと落ちました。赤鬼くんは本気で頭をたたかなかったから本当はやさしいんだよね〜」「〜私も人を助けるようになりたい〜」「〜私だったら自分のことしか考えず,青鬼さんのようにはできなかったと思う〜」「〜すごいお話です。感動です。」などがあったことで,児童の心に残るものがあったのではないかと思っている。

4.おわりに
 限られた紙面の中で,つたない私の授業実践についての記述が多くなってしまったきらいがあるが,久しぶりに道徳の授業を行ってみて,「教科の授業以上に難しい。しかし,やりがいがある。」というのが実感である。
 「心の教育」の充実がますます重視されつつあるが,これを契機に,さらに努力していきたい。
 最後になったが,授業公開,ならびに貴重な資料を提供して下さるなど,ご協力賜った諸先生に深甚なる感謝の意を表したい。

[参考文献]
・道徳・特別活動の特質と指導  青木孝頼著 明治図書
・実践 道徳教育法    新宮 識著 建帛社
・感動の教育   木更津第一小学校著 酒井書店
・心を育てる道徳の授業  石川?男 竹ノ内一郎著 国土社
・実践力を育てる道徳授業活性化のくふう  竹ノ内一郎著 文教書院
・ドレミファブック5 世界文化社


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