3.図形指導の問題点と原因及びその解決策
中学校第2学年の図形指導では,いわゆる論証的な方法によって,図形の性質の考察が行われる。
そのため,中学校の多くの数学教師から各種の研究会などにおいて,図形の証明指導に関する問題や悩みが出されることが多い。
ここでは,その図形指導上の問題点やその原因の解決策についての手がかりを得るため、また,数学がいわゆる論証指導で当面問題になっている実態を把握するために,次のようなアンケート調査を実施した。
(1)調査の対象
昭和60年度福島県教育センター主催の中学校数学講座受講者を対象に調査票を配布し,回答を得た。
(2)調査の期間
昭和60年9月17日〜昭和60年10月17日
(3)調査票配布数 40人
(4)調査票回収数 40人
(5)調査票回収率 100%
(6)調査内容と結果の考察
A 図形の証明指導において,証明の必要感を持たせる指導の工夫をしていますか。 |
ア.している・・・25%
イ.ときどき・・・57%
ウ.していない・・・18%
証明指導の初期においては,特に証明の必要感を持たせることが大切であるといわれる。アの25%は,必要感を持たせる教材の不足も考えられるが,重要性の大きさの割には少ないように思われる。必要感を持たせるための教材の開発などの努力が足りないことが考えられる。
B 図形の証明指導において,証明を記述させる指導の前に証明の筋道を口で言わせる口頭表現を取り入れてますか。 |
ア.している・・・59%
イ.ときどき・・・28%
ウ.していない・・・13%
アの59%という数字は,いきなり形式的な証明の記述を強要するのでなく,口頭表現などの段階的な指導が大切であることをよく認識していることがわかる。しかし,記述指導を中心に指導している割合も決して少なくはない。生徒の発達段階を考えて,段階的な指導をすることの大切さをもっと強調する必要があろう。
C指導過程に生徒同志が互いに考えをぶっつけ合いながら証明を作りあげる主体的な学習活動の場を位置づけていますか。 |
ア.している・・・8%
イ.ときどき・・・67%
ウ.していない・・・25%
主体的な学習活動は,証明指導の時間だけでなく,どの時間でも重視されなければいけない。この回答では,アが8%しかなく,ウの「していない」が25%もある。証明指導は,生徒の主体的な学習活動を指導過程に位置づけると時間不足になりがちなために,一般的には,教師中心の授業形態になりやすいことが分る。
D 図形指導において,指導時間が足りないといわれますが,単元の目標分析などを通して,教材の精選や指導の重点化の工夫をしていますか。 |
ア.している・・・23%
イ.ときどき・・・39%
ウ.していない・・・38%
目標分折などの方法を通して,教材の精選や指導の重点化の工夫をしているのが23%では少ないと思う。ウの「していない」が38%と多いのに驚いた。ただ,指導時間が足りない,指導が難しいと問題点を指摘するだけで,指導計画にゆとりを持たせ,効率的な指導方法の改善の