研究紀要第63号 「教育課程の実施に関する研究」 -064/093page
ア.家庭一般は家庭に関する他の科目の基礎となるものであるから,家庭に関する科目の最初の学年で履修させる。
イ.2箇学年に分割して履修させる場合には,学習効果をあげるため継続して履修させる。
ウ.内容の配列は,家庭経営を中心にして,2単位ずつ分割履修している実態から,第1学年で「家庭生活の設計・家族」「食生活の設計・調理」「住生活の設計・住居の管理」,第2学年で「衣生活の設計・被服製作」「母性の健康・乳幼児の保育」とする。
エ.自己教育力の育成が叫ばれているなか,実践的・体験的学習として,広く社会との関連において家庭生活の充実向上を図ろうとする積極的学習として,ホームプロジェクトや学校家庭クラブ活動を重視し第1学年で10時間,第2学年で9時間,計19時間を計画し,生徒を主体的に活動させる実践の場を作る。
(2)指導内容と時間配当例
指導計画作成に当たっての配慮事項をふまえ,指導内容の時間配当を行うと,次のように考えられる。
第 1 学 年 時間 オリエンテーション 1
家庭生活の設計・家族 8
食生活の設計・調理 40
住生活の設計・住居の管理 11
ホームプロジェクト・学校家庭クラブ 10
計 70
第 2 学 年 時間 オリエンテーション 1
衣生活の設計・被服製作 38
母性の健康・乳幼児の保育 22
ホームプロジェクト・学校家庭クラブ 9
計 70
以上のように,時間配当を行ったが,学科の目標や学校や生徒の実態をふまえ,弾力的に考慮することが必要である。4.家庭一般における主体的な学習の意義
生徒が主体的に学習するためには,教師は,「教える指導」から「育てる指導」に転換しなければならない。しかし,「育てる指導」は生徒が育つだろうと手をこまねいて,待っている指導ではなく,応用発展するための,基礎・基本は,しっかり身につけさせ,何を,どのように学ぶかという学習の仕方を学ばせる指導である。
生徒が主体的に学ぶためには,その学習が成就感,充実感,満足感を抱かせるものであるかといいことを,教師が,まず考えなければならない。
「教えの授業」では,学習課題を教師の説明と実験と示範等で解決される活動が中心となり,教師は教えたことで満足し,生徒の思考過程や理解の程度が無視されがちである。
このような授業からは,生徒が主体的に学習することは困難である。そして,成就感,充実感,満足感が味わえないので,当然次時への学習を,生徒自ら取り組んでやろうとする意欲など,起きるはずはないのである。
ところが,「育ての授業」では,課題解決の過程で,生徒自ら学習のめあてや,見通しを持ち,自分の力で解決する場面を経験させることにより,教師は,生徒の援助,協力者となり,生徒は能動的な学習者となるのである。このような学習を通して,生徒の成就感,充実感,満足感を満すだけでなく,自己の存在,つまり、承認の欲求が満たされ,更に主体的学習への基盤になると考えられる。
そして,それは家庭に関する基礎科目である,家庭一般の目標である「家庭生活を合理的に営み,その充実向上を図る能力と,実践的態度を育てる」ことに相通ずるものであり,主体的学習をさせる上で,実験・実習が有効な学習方法である観点から,学習指導要領では,実験・実習に充てるべき