研究紀要第63号 「教育課程の実施に関する研究」 -065/093page

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授業時数が明示されたのである。

(1)家庭科の実験・実習
 家庭科の学習においては,実践的・体験的学習が重要であり,計画を立てる,実習する,製作する,活用する,などの流れを持つが,その背景には「なぜそうするか」,「そうしなければならないか」,「そうするのがよいのか」の根拠が必要である。この根拠が理論であり,理論を明確に認識しなければならない。教室での実践は,特設された場で,決められた題材での学習であり,生徒の日常生活のなかに.そのままの形で実践できるとは考えられない。生活の場に適し,時に応じての実践となるが,そのためには理論の理解が必要である。理論の理解には,実験によって確かめることが大切である。現在,授業時数の制約や生徒の実態などから実習題材,製作題材の完成に指導が集中されがちであるが,これで果たして生きていく能力が育つのか考えてみる必要がある。また,便利な時代,多種多様なものに囲まれ,情報過多の時代,家庭が単なる「ものを消費する場」だけの機能に成り下っていはすまいか,「家庭とは何ぞや」「家庭科とは何ぞや」と常に意識していなければならない。
 各教科には,それぞれ教科の成り立つ基盤がある。例えば,家庭経営に深く関係している社会の各科目は,社会科学の上に立ち,それぞれの事象を歴史的,経済的,哲学的,倫理的にと,観点を定めて,系統立てて,科目の内容としている。
 また,自然科学は,物理的,化学的,生物的,地学的にと系統化され,細分化され,理科の各科目を構成している。
 このように,各教科は基盤を科学においているが,家庭科はどうであろう,「家庭科の基盤は家庭であるが」が,他教科のように「基盤となる科学は,これです」と,言える独自のものがないのではないだろうか。
 しかも,家庭の形態が各国,民族,時代によって異なり,「これが家庭です」と,定義づけもむずかしい現状である。単一の科学に立脚する他教科からみると,家庭科に対する理解を妨げているのではないだろうか。取り扱う内容も日常的なものが多いので,未知なるものを学習する教科からいえば,関心が薄くなるざるを得ない点を指摘できる。

 しかしながら,家庭科の学問的背景になっている家政学は下の図のように総合性を持っている。
家政学の総合的機能
 家政学の総合的機能(Grace Honderson, Levelopment of Economics in United States,College of Home Economics Pennslvania State University) 「フレックスの家庭科教育法(家政教育社)」より

 以上のように,家政学が総合的な機能をもっているので家庭科で扱う内容は,家庭および家庭生活に関することに共通性があり,このとき家庭は集団の器を指し,家庭生活はその集団および器で行う行為を指している。
 従って,すべての科学にまたがるのも当然であり,家庭科の特徴となり,家庭科における細分化された科学の関連性を総合性と呼ぶ。この家庭科の特徴である総合性を,他教科に対する優位性へ変換できないものだろうか。つまり,この総合性を家庭および家庭生活に関することで系統化することができるならば,家庭科の立脚すべき科学,教科の基盤となるペき科学が明確になるのではないだろうか。
 これからの社会や人間の活動には,このような


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