研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -001/106page

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I 身近な素材を活用した理科指導

 近年特に「身近な素材を活用した理科指導」の重要性がさけばれているが,このことについては,理科指導の中では,非常に古くから主張され,実に古くて新しい指導上の基盤となる理念である。
 元来,理科指導の基本は,「自然の事物・現象についての直接経験を重視し,自然環境についての基礎的な理解を得させ,最終的には,総合的な自然観の育成」にあることから,当然,学習の出発点や終着点が身のまわりの自然の事象を対象とする学習内容であるべきであろう。
 しかしながら,ややもすると抽象的な科学概念を強調し,ドライラボ的な学習指導におちいり,その内容が十分に理解されずに,理科ぎらいな生徒を増加させてしまってはいないだろうか。また,断片的な知識の暗記のみに片寄りすぎて,具体的な身のまわりの自然現象に対して法則を適用していけるような,いわゆる科学的な思考力を養うことへの指導に欠けていたのではないかと反省させられるのである。
 生徒は,身近なものについて,感覚的であれ,何らかの形で把握したり,体験したりしている。この面から,身近な自然や素材を学習の対象とすることは,単に直接経験させることに留まらずに,学習内容の定着率からも非常に効果が期待されるものである。この様な視点から「身近な素材を活用した理科指導」をあらためて考察してみたい。

1.身近な素材についての定義づけ

図-1 「身近な素材」についての定義づけ

図-1 「身近な素材」についての定義づけ

 身近な素材をいかに教材にとり入れ,いかに指導していくかを検討するにあたって,まず身近な素身近な素材材とはどのようなカテゴリーのものをさすのかを明確にしておく必要がある。
 一般に理科の学習においては,身近なものの学習の対象を,生徒が日常行動している範囲の自然の諸事象としてとらえている場合が多い。
 しかしながら,家庭内における電気にかかわる手軽に得られる諸事象や,太陽や月,地層や岩石などを含め,広義に解釈することもあろう。
 また,近年は,生徒を


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