研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -002/106page

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 とりまく,情報量の増大に目を向ける必要があり,この面での身近さを考えるとき,十分学習の素材になり得るものがあるし,それを選択して学習指導に生かしていく必要もあろう。
 更に,指導者側から考えれば,理科の学習内容の展開にあたって,必ずしも,高額な機器を使用しなくとも,中学生のそれぞれの学習段階における学習目標を十分に達成できる手軽な素材を開発することも必要である。むしろ,手軽に作製・利用できれば,実験・実習の回数も増せるばかりでなく,器具の数も多く準備することができ,学習指導の個別化も図ることができる。
 以上のことから,本誌の作成の基本的考え方として,「身近な素材」の定義づけを,図−1に示すようなカテゴリーで考えることとした。
 すなわち,a:生徒の生活行動の範囲にある素材,b:興味・関心のある情報としての素材,C:指導上,手軽に得られる素材の三つのカテゴリーの全部を総合した範囲で,これを定義することとして以後の章における各論を展開することとした。

 

2.身近な素材の活用の意義

 身近な素材をできるだけ多く学習内容にとり入れ,展開することは,生徒の学習へのとり組みの上で非常に効果的である。さらに,学習内容の定着度も高まることになり,活用の意義は大きい。
 言うまでもなく,理科学習は,あくまでも直接経験を基盤としている。すなわち,知識を獲得するための探究の方法を体得させることに終局的な目的があるだけに,直接経験によることが重要である。身近な素材は,生徒たちの手近にあることによって,直接経験することができ,自由に学習できる利点がある。
 しかしながら,素材が生徒たちの目にいつも触れているだけに,これに対して何等の疑問や問題点を意識することなく,当然のことのようにすごしている場合が多い。そのため,指導者にはこれらの素材を学習へ活用するにあたって,十分に課題意識を持たせる配慮が必要であり,この配慮が適切であれば,今まで気付かなかった新しい事象を発見したり,問題解決のための科学的な思考力や科学的な態度が身についていくものと考える。

 次に,活用の効果の主な内容やその配慮について2〜3触れてみたい。

(1)学習内容に,課題意識(問題意識)を持たせる効果
  学習成立のためには,生徒が学習内容に興味をもち,解決しようとする課題(問題)意識を醸成 しなければならない。そのために,具体的な素材が身近にあることは指導上極めて有利である。し かしながら前述したように,これら素材は,新鮮さに欠け,興味・関心を示さない場合が多いだけ に,教師の働きかけによって,あらためて疑問や興味がわいてくるものと考える。

(2)具体的な素材を用いることによる直接経験の場を与える効果
 一般に中学校段階の生徒にとっては,文字や,テレビ等の情報により,直接事物に手を触れなく とも知識として獲得している場合も多い。しかし,その知識は,知識としてのみ定着し,発展的な 思考力として,広く問題解決能力まで獲得しているとは言えない。
  このことが,基礎的な経験と結びついた場合は,かなり高度な理解へと発展するであろうと考え るとき,直接経験させることの効果は非常に大きいと考える。

(3)身近な素材から,法則性・規則性を養うことのできる効果


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