研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -003/106page

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 中学校段階では,単に身近な素材,自然の事象に触れさせることのみに留まっていたのでは,知的な欲求を満たすことはできない場合が多い。すなわち個々の事象は,ある一定の規則性・法則性に基づいて存在していることを発見させることが,終局的なねらいであるからである。
 そのためには,身近な素材を用いることにより,多くの観察や実験が可能になり,そのデータを累積して,法則化まで到達させることもできるという利点がある。

(4)情報量を精選し,科学的に思考できる能力を養うことのできる効果
 生徒たちの日常生活の中で受ける情報の量は,極めて多量である。しかし,多くは,問題意識をもって情報を受けとめ,これを解決すべく努めたり,選択して受け入れる態度が十分であるとは言い切れない。そのため,指導者は,これら素材を的確にとらえ,教材化し,学習指導に生かすよう努める必要がある。すなわち,日々新鮮な情報収集に努め,理科指導内容とのかかわりをおさえ,随時必要に応じてとり入れたり,年間の指導計画の中に位置づけて指導することによって,生徒たちはこれらの情報を分析的にとらえていくようになり,広い意味での学習内容の定着度の高まりや,自然へのアプローチの態度にも変容が見られるようになるものと思われる。

(5)身のまわりの環境に対する関心や態度の変容のための効果
 自然の事象と人間生活とのかかわり合いの中で,自ら問題解決していこうとする意識を高めることや,自然環境の保全に対する関心を高めていくことは,将来へ向けて,よりよい自然観を形成するに極めて重要なことである。その意味でも,身近な素材の教材化は重要である。
 いずれにしても,これら身近な素材を用いて科学概念を導き出す場合には,具体的にどの様な素材を用い,どの段階で,どのように学習に位置づけていくかが問題となる。

 すなわち,身近な素材は一般に個別的・特定的な場合も多く,一般的,普遍的でない場合があるため,指導をいそぐあまり,観察・実験によって得たデータを十分に分析することなく,一般化や概念化を図ってしまい,生徒の思考を逆に混乱させてしまう場合も考えられる。
 そのため,身近な素材を有効に生かすためには,指導内容及び科学概念の構造を明確にし,それに基づいて学習指導計画の中に適切に位置づけることが非常に重要である。また,毎時の指導過程の中にあっても,どの段階でとり入れるのか,その利用の結果何を得させたいのかを明確にしておくことも大切である。
 以上のことが適切に行われれば「身近な素材の活用」は,大きな効果を得ることができる。

3.理科指導上の問題点(理科の困難点)と「身近な素材の活用」

 研究を進めるにあたって,まず中学校における学習内容(題材)を分析し,従来まで指導上問題となっていたことを洗い出し,「身近な素材の活用」という視点から解決の方向を示唆する実験や観察方法について考察し,解決策を検討した。これを一覧表にしたのが,次ページからの図−2,3,45である。
 指導上困難な部分については,以前から指摘されている部分も多く,その解決策には苦慮してきたところであるだ桝こ,今回の「身近な素材の活用」によるアプローチがどれだけ目的を達成することができたか不安な面もある。しかし,少しでも寄与できればと考えた次第である。
 なお,事例の中で,括弧書きで実践研究となっているものは,実際に研究協力員の先生方の授業研


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