研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -012/106page
3.パソコンのシミュレーション機能を用いた「化学変化」の指導
1.はじめに
近年の情報化時代にあいまって,コンピュータに関する子供たちの興味と関心が高くなり,いろいろな面で利用され,身近なものとなってきている。学校教育の中でも,近い将来において,ごく普通に利用されることになろう。
ここでは,その利用の一例として「酸素と水素の反応から水ができる過程」,及び「酸とアルカリから塩ができる。いわゆる中和の反応」について,パソコンのシミュレーション機能を用いて,黒板やOHPなどでは説明しきれない領域について利用を試みた内容について紹介する。2.素材の活用と指導法
図−1 指導過程の中での「シミュレーション」の利用場面(※印)
理科教育の基本は,実験・観察を通じて結論を導き出すことに学習の意義があることは当然であるが,その結論を導き出す過程(実験結果を解析していく過程)で,パソコンのシミュレーション機能を有効にとり入れることにより,より定着が的確になると言える。すなわち,図−1に示したような指導上の位置づけを行うことが必要である。
パソコンの利用に慣れると,あらゆる事象についてこれを利用しようと心がけるあまり,本来の実験・観察の領域まで,これに代替するようなこともあるが,それは,まったくの誤りで,この場合のように学習内容の定着のためや,導入の段階での,課題意識を喚起するための補助手段として用いられれば,効果は極めて大きいと思われる。
(1)酸素と水素の反応から水ができる過程のシミュレーション
図一2は,パソコンによって,「2H 2 O 2 →2H 2 O」について,分子同志の反応をモデル化し,結合の状況を動的に説明したシミュレーションである。
すなわち,1)では,酸素と水素の分子が存在し,壁をとりのぞくと,2)のように少しずつ動きながら近づいていく。次に,3)のように結合の状況が変わり,水ができる。4)は,再び最初の状態にもどして,5)のように2H 2 に粋がこみをし,その後,欄外にの文字ができるように構成されている。このようにして,6)でO 2 の枠がこみをし,欄外に「H 2 O 2 」が示される。