研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -018/106page

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5.自転モデルを用いた「電流が磁界から受ける力の向き」に関する指導

1.はじめに


 電流のまわりに生じる磁界の向きは,実験を行い「右ねじ」を用いてその向きを記憶させることが多い。また電流が磁界から受ける力の向きも実験のあと,いわゆるフレミングの左手の法則などを用いて覚えさせようとする。これらの方法のほかに,第1学年の第2分野ですでに学んでいる地球自転のモデルを使って記憶させる方法を考えてみた。

2.地球自転モデルの活用と指導法

(1)電流のまわりに生じる磁界の向き
 電流の向きを地軸の南極から北極への向きとすると,磁界の向きは地球自転の向きとなる。なお赤道を磁力線のひとつと対比させる。

(2)電流が磁界から受ける力の向き
 電流の向きは(1)と同じように,地軸の南極から北極に向かうものとする。地軸(電流)が赤道(磁界)から受ける力の向きは,地軸の方向にも赤道の方向にも垂直な向きである。つまり,赤道から地球の中心に向かっている重力の向きとなる。重力の向きは第1学年で学習している。

(3)磁界の中で動かした導線に流れる電流の向き
 動いている導線中の電子が受ける力の結果として(2)を用いてもわかるが,(1),(2)と同じように地軸(電流)赤道(磁界)の向きはそのままで,導線を動かす向きを赤道上でジャンプする方向,つまり地球から遠ざかる方向とすれば良い。
 以上(1)〜(3)は原理の異なる事項であるが,地軸の向き(南極→北極)を電流の向き,赤道の自転の向きを磁界の向きとすれば,共通に当てはめることができる。なお,(2)と(3)の図で,電流を地軸に平行に移動し,人の場所まで持ってくれば,電流は磁界の中に存在することになる。

電流の向き・磁界の向き 電流の向き・磁界の向き

3.ま と め

 生徒の知っている地球の自転だけをモデルにして,(1)の磁界の向き,(2)の力の向き,(3)の電流の向きという「電流と仕事」の中で必要な3つの量の向きを機械的ではあるが知ることができる。この方法は,それぞれの物理量の方向が互いに垂直であることがわかり,現段階では“なぜ”という科学的疑問には答えられないが,将来の高校物理の学習において発展的な思考力を育てる基礎となるものと思われる。


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