研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -026/106page
9・教科書や文庫本などをモデルとした「移動する熱量」に関する指導
1.はじめに
「電流による発熱」の最初に“熱量をどのように決めるか”を学習するが,この熱量という概念をしっかりと把握するためには次のような障壁を乗り越えなければならない。
(1)熟塵は物質ではなくエネルギーという目に見えないものであること。
(2)熱塵は温度との違いを明確にすること。
(3)熟崖はある物質が本来持っているものではなく,温度の高い物質から温度の低い物質へ移動するエネルギーであるという認識をもつこと。
たとえば,日常的には医師も「ほう,やはり熱があるね。38度7分だよ」などと言うのである。明らかに熱と温度が曖昧で区別なく使われている。このように一般の人々(中学生も含む)が抱いている熱と温度についての間違った概念を修正してやる必要があり,目に見えないものをモデル化して視覚化し,正しい理解ができるよう工夫してみた。2.素材の活用と指導法
(1)指導法
熱量の表しかたをある教科書では“一定質量の水を熟した時間〔分〕と水の温度変化〔℃〕のグラフから始まり,(水の質量)×(水の温度変化)の値が一定であるからこの値により水に与えられた熱量を表すことができる”という高度な方法で展開している。この方法では,グラフを読みとり定量的に処理し解釈するという数学的な思考が先行してしまい,理科で本来必要な熱量という“量の概念”を把握しにくい。
そこで小学生でも経験的に知っている熱すれば温度が上がることを前提に最初展開していく。
ア→イ→ウ→エの思考順序でエの式を導き出せば,式の暗記には終わらない。このように熱量はあたかもお金のようにやりとりするもの(エネルギー)だという概念を植えつけたい。
こうして熱量の大きさを示したあとで,移動した熱量の大きさは,(水の比熱)×(水の質量)×(水の温度変化)という3つの量のかけ算なので,立体モデルとし,生徒の身近にある材料を用いて理解を深めさせることができる。