研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -028/106page
10.模型用モーターを用いた「電力量と仕事」に関する指導
1.はじめに
第3学年最後の章の「運動とエネルギー」の中で,電力量を仕事に変える装置としてモーターを学習し,仕事を電力量に変える機械として発電機を学習する。
コイルの中の磁界が変化するとコイルに電圧が生じ,このとき回路が閉じていると電流が流れるという電磁誘導の現象は,通常コイルと磁石とマイクロアンペア計(増幅器を用いることもある)などを使用して実験する。この方法では磁石やコイルを動かすこと,つまり仕事をすれば電流を流すことができるのであるが,人間の手で動かすことが多くしかも往復運動なので,人がする仕事の大きさも周期的に変化し誘導電流の大きさも変化する。この変化を用いて磁石の極の運動の向きと誘導電流の向きの関係を知ることはできるが,仕事と電力量の関係は把握しにくい。
そこで,電流の向きが変わらない模型用直流モーターを用いて,大きな電力量を得るためには,大きな仕事が必要であることを示す工夫をしてみた。2.模型用モーターの活用と指導法
(1)使用器具
・模型用モーター 2台・プーリー(1cm,2.5cmなど)・固定用木台・輪ゴム・豆電球(1.5V,0.3A)2個 ・乾電池(単一,2個直列)
(2)活用法
模型用モーターB(丸囲み)は直列に接続した電池と直結してモーターとして使い,輪ゴムをベルトとして回転を模型用モーターB(丸囲み)に伝えこれを発電機として用いる。このとき,発電機として用いたモ一夕ーB(丸囲み)に加わる負荷によって,モーターA(丸囲み)の回転の速さが変わる。
その負荷として豆電球を用いた。豆電球の抵抗は温度によって変化するので正確には種々の吟味が必要であるが,ここではそれを考慮しなくても定性的演示実験としては十分であろう。
生徒には,モーターB(丸囲み)に流れる電流が大きくなればなるはど,モーターA(丸囲み)の回転が遅くなること,つまり,大きな電流を流すためには大きな仕事が必要なのだということがわかる。
モーターB(丸囲み)に流れる電流は次の順に大きくなり,モーターA(丸囲み)の回転は逆に遅くなってくる。特に,モーターB(丸囲み)の端子を接続しない状態と,短絡した状態との著しい違いは,見せる価値があろう。驚きとなぜだろうという疑問が生じるはずである。
接続しない→豆電球2個直列→豆電球1個→豆電球2個並列→短絡