研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -030/106page
11.体験を通した「速さの変わる直線運動」に関する指導
1.はじめに
速さの変わる直線運動は,落下運動や台車の運動を,記録タイマーのテープやストロボスコープを用いた写真から・同じ時間間隔での距離の変化として直観的にあるいは解析的に理解させている。しかも,取り扱う運動は,速さの変化の割合が一定のものが大部分である。
そこで,教科書の記述のような間接的な内容理解ばかりではなく,次のような直接的な体験的学習を加味することによって,より具体的な深い理解へ導くことができると思われる。2.素材の活用と指導法
(1)用意するもの
時計(秒単位の計測ができるもの)。巻き尺。
(2)1m/秒の速さの体験
生徒8人が一直線上に1mの間隔で並び,片手を前に水平に上げる。計時係Tの合図に合わせ,8人は1秒ごとにA,B,…,Hの順に手をおろして行く。体験者は,A,B,…,Hが手をおろす瞬間に合わせて,それぞれの傍らを通過するように歩く。
(3)1m/秒ずつ速くなる運動の体験
下図のような間隔で8人の生徒を並ばせ,(2)と同じようにTの合図に合わせて1秒ごとに順次手をおろし,体験者はそれに合わせた速さでそれぞれの傍らを通過する。うまく通過できるようになるまでには,数回の練習が必要である。A〜Hまでの間隔が次第に広がっていることから,速さが次第に速くなることが誰でもわかり,その間隔も1mずつ広がっていることから,高校における速さが変化する割合(加速度)の学習の手助けにも結びつく。
3.ま と め
この方法は・記録タイマーやストロボ写真による方式と同じ原理なので“運動のようすと力”の導入段階で体験させることは意味があろう。なお,1m/秒ずつ遅くなる運動の体験は,体験者を逆から走らせればよい。中学校理科学習においても,可能なものはできるだけ体験させたいものである。