研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -031/106page
12.「ミジンコの培養と観察」の指導
1.はじめに
水中の小さな生物についての指導には,水槽の中の微生物を直接観察させるような指導が一般的のようであるが,観察される微生物が多種にわたり,その識別が困難であったり生徒またはグループごとに観察するものがちがうなど,問題がある。
ミジンコは最も身近な水中の微小生物であり,肉眼でも確認できる程の大きさなので,解剖顕微鏡などの低倍率の顕微鏡や,ルーペでも観察できる。また,これを培養することによって,授業展開のなかで,一斉に同じものを観察させることができる点でも良い材料であると思われる。
ミジンコの採集と培養,そして,観察実験の方法について述べる。2.素材の活用と指導法
(1)ミジンコの採集法
ミジンコを簡単に採集するには,図1のような,簡易プランクトンネットを用いて,用水池の周囲の部分や,小川の流れの穏やかな所を何度かすくいとるようにした後,水中から上げるさいにフィルムケースに水が入るようにしてすくい上げると,フィルムケースにミジンコなどが多数入ったものが得られる。
このフィルムケースをネットから取り外し蓋をして持ち帰り,培養や観察の材料とする。
簡易プランクトンネットは市販の観賞魚用のネットとフィルムケースを用いて自作する。
フィルムケースの底の部分をカッターで切りおとし,円筒状になったものから,縦に巾1.5cmほどを切り取り,図2のようなものを作る。
観賞魚用ネットの底の部分に別のフィルムケースを一方によせて入れ,これにネットの外側から円筒状にして一部を切り取ったフィルムケースをかぶせたものが簡易プランクトンネットである。
採集にさいしては,フィルムケースを数個持参して,採集場所どとにフィルムケースをとりかえて持ち帰ると,場所によって異なる種類のミジンコが採集できる。またルーペを持参し,その場でミジンコの存在を確認することも大切である。