研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -038/106page
14.ミズカビを用いた「カビの観察」に関する指導
1.はじめに
従来,カビの観察の際,パンや果実にはいているカビ(ケカビ)を使用することが多い。このカビの場合は,発育の様子が見にくく,遊走子もないことから,動きの変化を観察するのに困難な点がある。しかも,カビは・からだが微小なので,特殊なものだけを取り上げて培養する必要がある。培養する培地を作るには,培養物質を煮たり,蒸し器で殺菌したりする時間と手数が必要である。観察をするときも,菌糸や胞子などを針でとり,スライドガラスにのせると,胞子が飛散したり,菌糸がもつれて特徴が非常につかみにくい場合が多い。その点,観察材料として,ミズ申ビを用いると,培養も観察も容易であり,発育の様子もつかめる。その上,遊走子があるので動きの変化も観察できる。大部分の生徒は,空気中にカビが生育していることは理解できても,自然水にカビがいることばわからないので・観察意欲や興味をいだかせるのに効果的である。また,これらのカビは,水中の有機物に着生繁殖し生活している。このことは,生態糸の中の分解者として,自然界の重要な役割を担っていることを気付かせるのに身近にある良い観察材料である。
2.素材の活用と指導法
(1)ミズカビの培養方法
1(丸囲み) 図−1のように,ワリバシ,もめん糸で,スルメ(3〜5mm)をくくり,自然水(雨水,水田・井戸・沼など)に入れる。ミズカビは好気性なので,できるだけ水面近くの,水中につり下げる。
図-1 水カビの培養法2(丸囲み) 自然水に10分間つけたのちに,水道水にとり変えて,同様(図−1)にして,つり下げてお