研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -044/106page
16.「カエルの卵の採集と観察」の指導
1. はじめに
カエルは最も身近に生息している動物であり,どこでも簡単に見られたものであるが,農薬が使われだしてからは,山沿いの田やその付近でしか見られなくなった。特にトノサマガエルの数は激減したように思う。またカエルの卵についても同様である。
カエルの発生の過程の観察は,産卵が春の一時期に限られ,採集できる場所が近くにないこと,そして,指導の時期と合わないなどの理由から直接に観察指導が行われることは少ないようである。
この発生の過程の観察指導をいっでも手軽に行えるようにするために,卵を採集し,保存しておく方法と,その観察指導について述べる。2.素材の活用と指導法
(1)カエルの卵の採集と保存法
カエルの卵を採集するには,まず産卵時期を知ることである。地理的にも異なるが,福島市周辺では,ヤマアカガエルは2月末〜3月初旬,トノサマガエルは3月中旬〜下旬,ヒキガエルは4月中旬〜下旬である。
ヤマアカガエルやトノサマガエルの卵を採集するには,山沿いの湿田やその周りの側溝を早朝に探すと産卵直後の卵塊を見つけることができる。
卵塊のカンテン質がまだふくらんでいないものを選び,採集すると受精卵の状態の卵を得ることができる。これを実験室に持ち帰り,発生の段階を実体顕微鏡により確認しながらその一部を取り,10%ホルマリン溶液の入った広口瓶に入れ保存する。(図1)
保存する発生段階は下記の8段階とする。
1) 受精卵 2) 2〜4細胞期 3)8〜16細胞期
4)胞胚期(受精卵と区別しにくいので桑実胚の時期でも良い)
5)嚢胚期(卵黄栓が観察できる時期が良い)
6)神経胚I(神経溝が形成された時期)
7)神経杯II(神経管が形成された時期)
8)尾芽胚期(ふ化直前のもの)
図1 各発生段階ごとに広口瓶に入れて保存している状態