研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -055/106page
思考する場面では,観測者の位置と地平線を明確に定めないと,混乱してしまう場合が多い。
そのため,図−3に示した様な,「観測者の位置と向かっている方向(南面している),及び,地平線」を明確に示すことにより,思考を大きく助けることができる。このモデルは,フェライト磁石にボール紙で観測者の形と地平線を作り,はりつけ,黒板上を自由に動かせる様にしたもので,回転(地球の自転)も自由に行うことができる。
まず,図−1に示したように,黒板に描いた図に,この地平線モデル(図−3)を止め(10月の位置に止めている),これを回転(反時計まわり)すれば,10月1日の太陽の動きや,各星座の日周運動の関係が明瞭になる。しかしながら,これらの関係は,あくまでもモデルであるため,おのずから限界がある。その大きな原因は,「黄道12星座と太陽の距離」に対して「地球と太陽の距離」は非常に近い事実があるにもかかわらず,ここでは,太陽のまわりをまわる地球の軌道が,大きく描かれている。このため,図−2に示したように,10月の地球の位置を太陽の位置に止め,太陽を10月の地球の位置からみた同じ方向の4月の位置に移して考えることとした。そのような移動を行っても相互の関係は全く変わらないことになるため,これを用いることとしたい。そう考えたのが,図−4である。この図を用いて,「午前4時(図−4の地平線の位置)でのおうし座は南中……10月のある日」していることが明確になり,発展して「同じ午前4時における,ふたご座は何時に南中し,何時に沈むか」なども簡単に理解できよう。また・更に発展して,11月,12月,1月‥‥‥…などの各位置での,各星座の位置関係・動きなどについても理解できることとなる。
図−4 時刻と星座の位置関係を思考するモデル3.まとめ
天体の運動については,指導が極めて困難であるだけに,種々の指導上のアイディアが必要である。そのための考えかたの基本として,運動の−部分を止め,他の運動を考えるようにすれば非常に容易になることを押さえた指導が大切である。