研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -056/106page
22.TPシートを用いた「地軸の傾きと太陽高度変化の関係」の指導
1. はじめに
一日の太陽の動きや,季節の違いによる太陽高度の変化については,生徒たちが観測によってその事実を知ることができる。しかしながら,「太陽高度が一日の中でなぜ変化するのか」,「四季を通じて,南中高度が変化する理由はなぜか」についての,いわゆる,太陽の位置と地球の位置との相互関係をふまえた理解の段階になるとかなり困難な状況にある。
ここでは,従来までの発泡スチロール球などを用いての位置関係(春分→夏至→秋分→冬至),及び地軸の傾きの指導に加え,TPシートを用いて思考を深め,確実な定着を図のよう改善を加えたものである。2.素材の活用と指導法
透明半球や,太陽高度計等を用いて,一日の太陽の運動の軌跡を求めたり,四季を通じて太陽の南中高度の変化を求めたりして,データを得ることとなる。この事実をもとに,図−1に示すような仮想のモデルを準備して,地球・太陽の位置関係を思考させることが多い。
図−1発泡スチロール球を用いた思考モデル
ここでは,地球の位置の変化に加え,地軸の支柱の傾きを変えて太陽光の入射角が変化することを確認し,観測結果(データ)に矛盾が生じない条件を求めることにより,地軸の傾きの必要性を推論させることになるわけである。
しかしながら,太陽光の入射角(即ち,太陽高度の変化)の変化については,このモデルからは,地平線の位置の確認や入射角の確認の点で生徒たちには非常に困難性がある。それはモデル上に,地平線や入射角を設定することに無理があるため,作図なしで前述の概念を把握させなければならないからである。
そのため,空間的,立体的に太陽・地球の位置関係を把握させることや,地軸の傾きの問題提示のためにのみこれを用い,具体的思考場面は,図−2のTPシートを用いての指導が効果的である。
すなわち,太陽光に対して地軸がどの様な角度で面していれば,観測結果の太陽の高度変化と一致するのかを,いろいろな場合を思考させてみるために図−2のa〜eを準備した。