研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -058/106page
23.プラスチック水槽と色水を用いた「前線モデルの観察」の指導
1.はじめに
前線の構造・前線の移動をモデル化した実験は,大気というマクロで複雑な現象でイメージが得にくい。しかも動的にとらえることが必要である。このようなことから温度のちがう色水を使い,その境界で観察できる水の動きを視覚的に観察すれば,前線の構造やその動きを正確に把握させることができる。
2.素材の活用と指導法
前線に伴っておこる天気変化は,相接する2つの気団の性質によってちがってくる。これをモデル実験で示すには,「横長の透明ポリエチレンケース・簡易ロッカー用透明ケース・プラスチック水槽」(図−1)などを利用し,その中心部に仕切りを作る。すなわちプラスチック製の溝のある帯状の材を底面と側面とに接着しガラス(アクリル坂)で仕切る。これらは小型・軽量で操作も簡単で,生徒実験にも適しているので気象現象に対する興味・関心を引き起こすに適する。
モデル実験には図−2の自作アクリル水槽実験器を使用
−寒冷前線−A・B両部分に深さ約10cmになるように水を入れる。Aにはお湯を入れ温かい水にするが,A・Bの温度差は2℃以下とする。
Aは赤インクで赤色に着色する。
Bは青インクで青色に着色する。
その後,着色水の動きが止まったことを確認してから,A・Bの着色水の移動のようすを観察する。
仕切り板(D)を静かに引き上げた直後から1分間ほどの間に,図−3のように青色水(冷気団を表す)と赤色水(暖気団を表す)との境界では,双方の着色水は互いにほとんど混じり合うことなく,青色水は赤色水の下にもぐり込むように移動する。−温暖前線−
A・B両部分に探さ約10cmになるように水を入れる。Aの水は赤インクで赤色に着色する。
Bの水温をAの水温より少し(約10〜2℃)高くする。Cの部分に冷凍庫の氷片を7〜8個人れる。
約1分後に(E)の仕切り板を引き上げる。その後1分後に中央(D)の仕切り板を静かに引き上げる。 Aの着色水の動きを観察すると図−4のように,着色水が冷却水の上にはいあがるように移動する。
図−1 実験用具
図−2 前線のモデル実験器D・E(仕切り板)