研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -064/106page

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(ウ)生徒が主体的にとりくむという学習形態よりもまだ教師主導の一方的な学習が多い。
(エ)高校受験を念頭においた知的集約的な学習活動を行う傾向が依然として強い。
2) 教科内容についての問題点
(ア)理科第1分野では,教科書でとりあげている教材は内容が単純化されて原理や法則を導くためにすっきりした形になっているが,身辺の生活とかかわりのあるものが少なくて興味がわかず,印象が薄くなりがちである。
(イ)第2分野では比較的自分たちの生活にかかわる具体的で身近な内容が多く,生徒の関心も高くて理解の度合いもよいが,それでもまだ周辺に残されている自然や生物などへの働きかけが十分でない。

(3)問題解決の手だて
 自然認識の第一歩は己れの感覚を武器にして自然に働きかけることである。それ故,生徒を自然の事物や現象に触れさせて興味・関心を持たせ,好寄心を抱かせることは理科学習の出発点であり忘れてはならない指導原則の1つであると考えられる。
 物事に興味を覚え疑問を抱く心は,生徒の発達段階に関係なく,学習する上での必要条件であり行動をあらわす手とともに磨きあげて行かなければならないものである。
 中学校段階になるとある程度教科内容が高度になり,論理化・抽象化がはかられるので学習ほともすれば身近な事象から遊離しがちであり,それが,本来生徒が持っている自然に働きかけようとする科学的な意欲の芽をつんでしまうことになっているのではないかと考える。どんなに時代が変っても人間と自然は切り離せるものではないし,それなしでは生きては行けない。
 自然を認識させること,これに眼を向けることが肝要であり,この眼この心を育てることが我々の使命であると考えられる。そのためには,我々のまわりにあふれ生徒たちの身近に存在する見なれた種々の物質・製品を教材としてとり上げることからはじめ,次にこれを手がかりとして生徒を自然を認識する段階まで導きたいと思う。このことこそ「自然と人間とのかかわりについて」という中学校理科の目標に近づくための1つのステップたり得るものではないかと考える。すなわち
・いろいろな事象の原理・法則を理解させるには,生徒の身近にあり生活に深くかかわりをもった素材をとりあげて具体的な事例の提示や事象についての置きかえをはかり,教科書の記述内容を補強する必要がある。
・学校や地域の特性を生かし,それをとりまく自然の中に素材を求めてその活用をはかり,更には生徒自らが教材を発見することができるほどに生徒の自然を観察する眼を養う必要がある。

2.素材の活用と指導法

(1)仮説
 実験に必要な器具などを身近な素材を使って製作する過程の中に生徒の創意工夫を発露させ,同時に製作をとおして学習の目標を明確に認識させて行けば,教科内容についての生徒の興味・関心が喚起され,活動は主体的なものに変わり,事物・事象に対する認識が深まるであろう。


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