研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -088/106page
4.フィルムケースを用いた「分解者の実験」に関する指導(実践研究)
1.はじめに
(1)研究の趣旨
「分解者」の教材を中学校の理科指導で取り扱う場合,次のような問題点が考えられる。
1) 教材内容からの問題点
中学校1−2年生で取り上げられている生物教材では,動植物をひとつの個体として見る見方を取っている。しかし,分解者の教材は,生物どうしのつながりの大きな単元の中に位置づけられ・エネルギー収支や物質の循環といった生物を集団として見る見方を取るべきである。それゆえに,抽象的な見方が要求されるようになり,理解することが困難になるという問題がでてくる。中学校の3年生で取り扱われているのもこのためである。この教材を実施するためには,できるだけ具体的に,しかも経験を通しての学習が必要である。
2) 教師の姿勢からの問題点
野外学習に取り組ませる教師の姿勢に問題がある。野外での学習のわずらわしさや時間が取れないという理由から,敬遠し,演示実験や講義のみに終わってしまうのが現状である。教師自身が自ら自然に学ぶ姿勢が必要である。
3) 教具の問題点 今までの教具では,手軽にしかも能率的に実験がしにくい点に問題があった。「分解者の実験」では従来から,ビーカーと試験管を用いた実験法が取られている。この実験法では,結果まで考えていくと,長時間を要し,忘れたころに学習することになり,生徒が学習意欲をなくしていく傾向にある。しかも,教具の面からは,グループ実験が主となり,一人一人を生かした学習が展開しにくいという問題点が残る。
4) 生徒の実態からの問題点
この実験は中学生にとって,比軽的高度な実験操作や推論が必要となってくる。実験操作の未熟さや事実から論理的に思考していくことに弱い生徒には抵抗がある。(2)改善の視点
1) 学習指導要領の中学校理科「3,指導計画の作成と各分野にわたる内容の取扱い」の中で「内容の指導にあたっては,地域・学校の実態を生かし,自然の事物・現象を直接経験させ,自然を調べる能力の育成をはかること。」を強調しているように,生徒に実際に,野外学習をさせる場を設定してやる。
2) 具休的で生徒が経験している身近な素材を生かした手軽な実験法を開発し,その方法で個人個人の学習にまで生かせるように工夫していく。その点,フィルムケースは,身近にあり,手軽に手に入り,個別学習ができる。
以下,フィルムケースを用いた「分解者の実験」の指導について述べる。