研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -097/106page
5.画用紙と分度器を用いた「星座の日周運動」に関する指導(実践研究)
1.はじめに
(1)研究の趣旨
星座に関する指導では,日没後の西の空に見られる星座の位置や同じ時刻に南中する星座が季節によって変わることなどから,地球の公転を推論させることがねらいである。このねらいを達成させるためには,モデルによる推論も重要であるが,より指導効果を上げるためには,実際の観測を通し,生徒一人一人に実感としてとらえさせることが必要である。その点,これから述べる画用紙と分度器を用いた自作器具は手軽に,しかも多量に作れ,個別指導ができるので生徒一人一人に学習の定着がはかられる。以下,製作の仕方と活用法及び.その指導効果について授業実践を通して検証していく。1) 天体教材における生徒の認識や理解の実態
1表 天体に関する「用語」の調査 1985.9調 41名
星に関するコトバ いろんな人,TV,ラジオから 他の人に説明できそうか たびたび
聞いた聞いたこと
がある聞いたこと
がないできそう 知っている
が無理できない 北斗七星 44% 44% 12% 46% 34% 20% 北極星 39〃 49〃 12〃 34〃 49〃 17〃 カシオペア座 37〃 49〃 14〃 27〃 44〃 29〃 さそり座 32〃 59〃 9〃 17〃 51〃 32〃 オリオン座 34〃 54〃 16〃 29〃 44〃 27〃 太陽と時刻の関係 20〃 51〃 29〃 5〃 41〃 54 季節の星座(公職) 20〃 49〃 31〃 5〃 32〃 63〃 季節と昼の長さ 27〃 59〃 14〃 15〃 37〃 48〃 金星 29〃 51〃 20〃 10〃 51〃 39〃 火星 24〃 56〃 20〃 10〃 49〃 41〃 2表 星空のもとでわかる星座
星の名前 人数 百分率 北斗七星 36 88% カシオペア座 28 68〃 オリオン座 33 81〃 白鳥座 13 32〃 北極星 31 76〃 こぐま座 11 27〃 (大三角) 11 27〃 大くま座 9 27〃 3表 見たことのある惑星
1表から,用語を聞いたことがある生徒が半数を占めた。
惑星の名前 人数 百分率 金星 27 66% 土星 20 49〃 火星 21 51〃
太陽・地球の位置関係や季節と星座について説明出来ない生徒が約50%強もみられる。
2,3表から,実際の空を見上げて指摘できる星座や惑星は限られている。(2)問題点
1) 太陽,金星,月を除いて天体は夜でないと観測出来ず,またそれは長期の観測を必要とするので,授業時間に観測しつつ学習することは不可能でどうしても家庭での観察に頼らざるを得ないのが現状である。
2) 天体の学習については,それまでの経験や興味・関心に特に個人差が大きく,天体について多くの知識をもって観測もよく行っている場合とそうでない場合の差がはげしい。
3) 天体の動きを地球の運動と関連付けて推論することが出来ず,現象と原因とが混同していることが多い。
4) 南天も北天と同じように動くと考えている。