研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -103/106page
しかし,星座の動きを正しく理解することは,角度の計算が入ってきたり,星座についての見方が十分に指導していなかったりして生徒にとってはかなりむずかしい。定着度から見て,やはり,天体にかかわる指導の中に簡単な器具を製作させて,実際に星座の動く向きや角度を直接観測した経験が大きく影響しているものと推測できる。
3) 評価テスト5(丸囲み)の正答率をみると,地球の自転によって起こる現象であることは,上位・中位群の生徒の大部分は知っている。生徒は説明するだけでは不十分で,自転の根拠となる事実・事象を観測を通して調べた経験が大きく影響しているものと思われる。
4) 恒星の日周運動(北の空)の写真から北極星に近い屋と北極星から遠い星の動く速さはどう違うかを予想させて,理解させることは,本時の授業ではやや時間的に無理なので,別の機会に時間を取って写真の解析を通して指導していけば,生徒の疑問やつまずきは解消されるものと思われる。(2)まとめ
中学校の理科学習における地学分野の単元として第1学年「地球と宇宙」,第2学年「天気の変化」,第3学年「地殻とその変動」を取り扱っている。これらの学習内容は実際に観測したり実験や観察を通して授業を進めていかないと理解しにくい部分が多い。ここで取り上げた天体の動きもその一部分と言える。空間のスケールが大きく,その現象を理解させるための実験や観察が他の分野に比へモデルや野外の自然観察が多いため,実施上かなり困難な面がある。従って経験やモデル図によって推論する方法に頼らざるをえないところが多く,指導の仕方に大きく左右される。
天体の動きについては,単にモデル図で説明するだけでなく,天体観測をできるだけ実施していき,その観測結果で推論させていかないと誤った空間の概念をつくる懸念がある。このことが正しい宇宙観を育てる最も重要なことである。
中学校理科の目標に照らしながら,授業を反省してみると,一人一人の生徒に対して自ら正しく判断できる能力を養うためには,生徒の立場に立って基礎・基本は何かを常に考えていくべきと考える。また,身近な自然の直接経験とか観察・実験が基本的な科学概念の形成とどのようにつながっているのかを明確にしていくことが重要である。
今回,一群法をもとに,評価テストにおける事前・事後テストの変容,アンケート調査による興味・関心・態度について,分析検討をしてきたがまだ不完全な部分が多く,問題点が残っている。しかし,星座の日周運動の指導において,身近な画用紙や分度器による自作器具を用いて,実際の夜空を,生徒一人一人に観測させたことは,個々の生徒に日周運動の概念を理解させるのに効果的であったと考える。この自作器具を使用していく場合,今後検討していくべきことは,「厚紙の穴から星が見えるまでに時間がかかること」,「この器具が他の星座に適用セきるか」,「季節と星座の関係を知るために適用できるか」等であろう。
ここに述べてきたことは,一方法にすぎないが,各学校において,実際の授業でさらに,この自作器具の活用法について,実践研究を深めていただきたい。