研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -002/066page
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2.反社会的行動をもつ児童生徒の教育相談の進め方 その2
第1年次研究において,教育相談の手順,すな わち問題の確認,資料の収集,診断,指導仮説の 設定,指導援助の順序や方法について,具体的な 資料を用いながら,詳細な説明を加えた。本年度 は,指導援助の順序や方法に焦点をあて,特に反 社会的行動をもつ児童生徒の治療面接の進め方に ついて論述する。
治療面接を効果的に進めるには,最初に反社会 的行動そのものを正確に理解することが必要であ る。それは,反社会的行動の諸様相を類型的にと らえるとともに,それらの成り立つ過程と具体的 な諸要因を的確に把握することである。治療面接 は,この基礎の上にたって進められるべきである。 なお,反社会的行動の教育相談に特に有効と思 われる面接の技法にも触れた。それらは本年度の 事例研究にも生かされている。
(1) 反社会的行動の類型
反社会的行動を類型化するのは,それを正確に 理解し,的確な診断と適切な指導を行うのに効果 的であるからである。例えば,小学生の万引きは 法律的には触法行為であるが,治療面接にあたっ ては,その行為の具体的な様態や要因を把握する 必要がある。そのために臨床的あるいは情動障害 に基づく類型などの基準に照応させればより多面 的な理解を図ることができるのである。類型化の 観点はいくつかあるが,ここでは反社会的行動の 理解に必要な次の3つの類型を示す。
<法律的な類型>
- 犯罪行為(14歳以上20歳末満で罪を犯すこと)
- 触法行為(14歳末満で刑罰法令に触れる行為をすること)
- ぐ犯行為(保護者の正当な監督に服しない性癖があるなど一定の理由があって,その性格または環境に照らして,将来罪を犯しまたは刑罰 法令に触れる行為をすること)
- 不良行為(上述の行為ではないが,けんか,その他自己または他人の徳性を害する行為をすること)
<臨床的な類型>
- 急性的なもの(一過性)
- 人格性によるもの(精神障害に基づくもの)
- 神経症的なもの(神経症に基づくもの)
- 不適応佐によるもの(神経症的なものを除いて,情緒的不適応による慢性的なもので,心理的な未成熟に基づくもの)
- 感応怯によるもの(不良環境や望ましくない交友関係からの影響で繰り返して行う場合が多く集団化の傾向があるもの)
- 習慣性によるもの(生活全般に犯罪的色彩が強いもの)(水島恵一による)
<情動障害に基づく類型>
- 愛情関係において阻まれているという激しい感情
- 正常な自己表現や自己満足が阻まれているという深刻な感情
- 幼少期にその充足が阻まれたために異常となった願望
- 思春期に特有の不安定で激しい衝動や願望
- 家族関係や社会的対人関係の中で生じた不適切感,劣等感,不満やしっとの感情
- 内面深くに抑圧されていることが多い葛藤に基づく混乱した不幸の感情
- 幼少期にある体験から生じた意識的あるいは無意識的な罪悪感ゆえの無意識的受罰願望 (W.ヒーリーによる)
(2) 反社会的行動の成り立ち
反社会的行動には,必然的に反社会行動を導き 出す本人自身の問題と環境の問題とが存在する。 これらは,本人の幼少時から相互に影響し合うこ とによって,絶えず本人を心理抑に不安定な状態
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