研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -003/066page
に陥らせ,問題行動発生の「素因」を形成させて いく。この状態が続きあるいは合理的に解決でき る能力が育っていないところに,問遊行動発生の 「誘因」が作用すると,ある種の心理機制が働き 反社会的行動が発生する。
ところで,反社会的行動をもつ児童生徒の生育 歴をたどっていくと,
望ましくない養育態度
→親子関係が疎遠
→子供の愛情飢餓の状態
→家庭内での存在感,充実感の不足
→親子関係の悪化
→生活全般で心理的に不安定
→学絞での対人関係の不適応,学業不振
→学校での疎外感,孤立感
となり,これに発生誘因が作用して反社会的行動の発生にいたる。
また,反社会的行動をもつ児童生徒が集団化していくのは,
日常生活における疎外感,孤立感
→集団形成の願望
→規範逸脱集団の形成
→集団内での充実感,満足感
→集団への帰属感の強化
であり,これに発生誘引が作用して集団的な反 社会的行動が発生するようになる。
それから反社会的行動がエスカレートしていく 過程を調べてみると,意識的にではなく,偶然の 行為の成功感,満足感,壮快感が動機づけとなり その反社会的行動が反復される。その過程におい て,反社会的行動が表面化した場合,周囲の人々 の不適切な対応がさらに人間関係を悪化させ,反 社会的行動を深化させていく。
(3)反社会的行動発生の要因
当教育センター教育相談部は,反社会的行動発 生の要因を生物的次元,心理的次元,社会的次元, 実存的次元の4つの次元でとらえる試みを行った。 反社会的行動の治療面接の手がかりを得るために, これらを次の図のように具体化した。
上図に含まれる内容は次の通りである。
<知能・学業>
知能と学力のアンバランス.学業不振,など
<身体・生理>
脳の機能障害,早熟,身体・生理面における不 満足感,など
く性格・生き方>
心理的不安定,社会的不適応,活動的,外向的, 規範逸脱傾向,社会生活に対する考えの甘さ,勉 強に対する目的や将来への希望が希薄,親や教師 に対する不満,人間不信,など
<友人関係>
規範逸脱集団との交遊,いじめられ,など
く家庭・社会>
家庭の雰囲気の悪さ,両親問の不和,家族問の 結合の弱さ,家庭生活全体の秩序のなさやだらし なさ,家庭内でのレクリエーションの少なさ,家