研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -004/066page
族の自尊心や抱負のなさ,父親の望ましくない養育態度(無関心,拒否的,厳格,極端な体罰,気まぐれ),母親の望ましくない養育態度(無関心,拒否的,冷淡,叱責や体罰,盲愛,気まぐれ),子供の誕生を祝福しない雰歯気,予期に反した性別の子供としての受け取り,社会全体での規律の混乱やモラルの低下など
<教師>
指導力不足,指導体制の不適切さ,児童生徒理解不足,教師と児童生徒との人間的交流の不足,など
(4)治療面接の進め方と留意点
治療面接のねらいは本人の人格の統合と環境調整の二つである。環境調整には親の養育態度,ものの考え方・生き方の変容及び教師の指導観や指導のしかたなどの改善も含まれる。
≪児童生徒との面接≫
治療面接の過程は,ラポール(またはリレーション)を形成し,本人の自己洞察を図り,現実場面への再適応ができるようにすることである。
[1] ラポールの形成を図る
反社会的行動の児童生徒の多くは,「親しい人間関係をつくる」という点において不適応をきたしている。そのために,話しかけても返事をしない,投げやり,挑戦的,反転的,拒否的,防衛的などの言葉や態度がみられ,容易にラポールがとりにくい。特に初回面接時は本人が混乱している場合が多いので指導援助者は肯定的働きかけを積極的に行い.受容,共感を図る必要がある。
また面接中,自然な形で肩に手をかけることなど,やさしく身体的な接触を図ることも大切である。しかし,女子に対しては誤解をまねくことがないよう十分に配慮する。
さらに,ゲームや運動をすることもよい方法である。これは小学生や知的能力が低い生徒には特に効果的である。
なお,指導援助者は身だしなみ,表情,態度などの非言語的表現にも十分な配慮をすべきである。
※ ラポールの形成がなされたようす
指導援助者に対する,本人の,表情がなどやか,笑顔,接近,年齢より子供らしい言動,やわらかい声の調子,質問に対する素直な返事,学校内での出会いでのうれしそうな表情,約束や時間を守ること、など
[2] 自己洞察を図る
指導援助者と本人との深いラポール形成がなされてくると,本人は指導援助者の言動に自然に似てくる状況が発生する。これは本人と指導援助者とが感情レベルで相互に理解しあえるようになった状態である。指導援助者は,この段階が確認されたら常に柏手の感情を全面的に受け入れる姿勢で臨みながらも,善悪のけじめをはっきりさせる態度で対応する。すなわち,受容,共感しながら,毅然とした態度で対応するのである。
その過程において本人と,両親,友人,教師との関係について,記憶している時点から現在までのことを自由に話させる。そのことを通して,本人のもつものの見方・考え方や佐格的特徴,将来のこと,規則,社会のシステムなどについて目を向けさせていく。この時,指導援助者が戒めなければならないのは,指導援助者自身がこれらのことを指摘しないことである。
自己洞察が図られると本人は,性格の自己分析が可能になり,将来についての展望を広げ,そして何よりも自己規制力が身についていく。 なお,小学生や知的能力が低い生徒は,自己洞察を図ることが困難なので,正義や悪などについてやさしい言葉で例をあげながらきちんと教え再教育を図る。
[3] 現実場面への適応を図る
自己洞察や再教育を図ることができたら,本人の望ましい人間関係を広げていく。そのために,