研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -009/066page
(3)社会的次元
● 家族構成
父親は会社の若手課長として仕事熱心であり, 子どもの世話は母親にまかせっきり,母親は家事 と,夫,子供の世話をしながら,家庭でタイプの 仕事をしている。
● 家族システム・力動
家族の中から本人だけが切り離されているひず み型のタイプである。両親連合がやや弱く,母親 と2人の子供(女子)の結びつきが強い。
● 両親の養育態度と姉妹の関係
―親子関係診断検査―
型 父 母 9.矛盾型 85 30 10.不一致型 80 35 親子診断検査からは,父親は消極的拒否,盲従 型で子供とのふれあいが少なく,遊んだりするこ とはほとんどないことがわかる。
父親は,子供の行動に無関心であり,あまり厳 しく注意することはせず,普段は本人の言いなり になって甘やかしているが,母親からの要求で本 人を叱ることがある。
母親は拒否,干渉,厳格で,本人への対応はこ とどとく厳しい。母親は父親の養育態度に不一致 感を抱いている。
なお,家庭生活では次のようなことがある。母 親は本人を自分の言いなりにさせようとするが, 意に添わないことがあると殴ることがある。また, 母親はPTAの役員でもあり,教育熱心で本人の 能力以上の結果を求めて,叱咤激励することが多 い。
姉妹は成績が普通以上であり,母親の指示にし たがった行動をするために,常に母親からの承認 を受けている。柿妹は本人と言い争いをすること があるが,ほとんどの場合,母親を味方にして本 人を叱らせるようにする。
● 学校環境
[1] 教師のかかわりかた
年度がかわり新しく担任した学年でもあり,子 供一人一人の実態把捉が不十分なまま,指導に 入った。本人のとる行動はその多くが担任の授業 進行を妨害することになったため,はめるより叱 責することが多く,本人との信頼関係をつくりあ げるのに苦慮した。
[2] 学級集団との関係
組替えがあったため,わかり合う今までの友人 が少なくなり,注意を引こうとしてクラスの中で, おどけるような行動が多くみられた。
しかし,級友から受け入れられることが少なく, 悪ふざけが高じて友だちを殴る,ける,物をこわ すなどの行動をとるようになってきた。本人の意 志に反して,暴力を恐れた友人は本人のとる言動 に注意もできなくなり,本人を避けるようになっ てきた。