研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -011/066page
ように心がけています。このごろ子供が話しかけてくるんですよ」 母 「この前の日曜日,家族そろって山登りして来ました。ほんとうに何年ぶりだったでしょう。子供たちはとても喜んでいました」 父 「今度はみんなで外食にでかけようなどと子供からいわれているんですよ」 T 「とてもすばらしい計画ですね。子供さんの提案ですか」 母 「参観日に先生と話し合ったことをおとうさんと相談しまして,私たちはいつも本人を叱ってばか りいたことに気がつきました。そこでできるだけ子供をほめるようなことを心がけています」 ●10月末の母親との話し合い
本人の行動と養育態度の変容についで情報交換 をする。
<学校から>
- 授業中,おちついて話を聞くことができるようになった。
- 学習への取り組み方も,少しずつではあるが積極性が見られるようになった。
- 作業活動は,以前より長い時間できるようになってきた。
<家庭生活から>
- 父親が休みの日は,父親も入って姉妹と一緒に遊んだり,楽しく話し合っている姿がみられる ようになった。
- 手伝いを進んでやったり,宿題などについて両親に質問をするようになった。
- 姉妹に対してやさしいことばかけがみられ,妹の世話をよくするようになってきた。
- しかし,姉妹とのやりとりで,カッとなって物を投げつけたりする行動がまだ若干ある。
- 両親とも本人を受け入れるようにしている。しかし,本人のとる行動にはまだ不安を感じている。
- 両親間の養育に対する意見の不一致感が改善されてきている。
- 父親が子供に積極的にかかわってきている。この日,今後,さらに本人にやさしく接して,承 認を多くすることを確認した。
(2)本人に対しての働きかけ
● 学習への取り組みに対する援助
<算数について>
算数が苦手なことについてチェックしてみると 小学校2年生の段階につまずきがあることがわか ったので,小学校1年生の問題を解かせ自信を持 たせることにした。(本人をCと記す)
T 「算数の勉強をしよう」
C 「計算はいつもどうやって解くかわからないからやりたくない」
T 「大丈夫だよ。きょうはこのへんの問題をやってごらん。(といって,1年生の問題を出す) きっとできるぞ」
C 「どれ,どれ。…‥‥‥う−んできそうだな」と,いってやり始まる。
「できた!」(ものすどく大きい声)
T 「すごい!できたなぁ,さすがだ。やっぱりできただろう」
と,いって大きな三重丸をくれる。 C 「できたから,もうすこしやってもいいよ」
T 「う−ん。やってみようか」 ここでまた,同じような問題を出す。
C 「先生。できたよ.丸かい,バッテンかい」
T 「どれ,どれ。またできたねぇ。すごいぞ」 計算問題の簡単なものから解決する喜びを持たせるようにしていった。
<国語について>
国語では,「富士は生きている」の教材をとりあげた。まず,音読の練習からはじめた。
T 「『富士は生きている』を,まず大きい声で読んでみよう」
C 「読めない漢字があるから‥‥‥‥なぁ」
T 「じゃあ,先生と一緒に読んでみよう。先生が読むから,あとについて読んでごらん」
T 「富士山は,日本を代表する山として‥‥‥」
C 「富士山は,日本を代表する山として,広く海