研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -015/066page
母…33歳,高校卒後,会社勤めをしていたが,す ぐに結婚し,本人を出産する。その後また会社 勤めをしていたが,現在は家に居り家事をして いる。家庭の中で発言権をもち,子どもの養育 にも熱心である。PTA活動など対社会的役割 にも積極的である。
妹(二女)…小学1年,生活能力があり,なんで も自分でするような積極性がある。友人関係も うまくいっている。
祖父…60歳,団体役員,社会的な信望も厚く,各 種の要職を勤めてきた。家庭では戸主であり, 家庭内のことについてとりしきっていた。本人 を小さいときからかわいがった。
祖母…54歳,何ごとについてもよく気がつき,炊 事をする。対社会的な役割もこなしてきている。 本人の養育には,乳児期からかかわり,本人が 母に叱られたときなどの逃げ場所になっていた。
● 本人の発達史
乳児期…手のかからない子で静かだった。泣くと すぐに母乳を与えた。
いつも母のそばに寝かせていた。泣くとすぐ に誰かが抱いていた。3歳…母が病気で入院した時,「お母さんがいな い」と泣くことが多く,まわりを手こずらせた。 つめかみがみられた。
4歳…母が会社に勤めるようになった時,朝の出 勤の際,本人が母からなかなか離れず手こずら せた。本人をだましだまし出かけたり,かくれ るようにして行った。そんな時,本人はいつも 「お母さん,お母さん」と泣いていた。
5歳…幼稚園に入る。近所の子と遊んだが,他の 家にはあまり行こうとしなかった。のんびりで 幼稚園にいくしたくがなかなかできなかった。
6歳…妹が生まれる。祖母とではなく,父と一緒 に寝たが,母のそばに行こうとした。しかし, あまり手をかけることができなかったせいか, いつも淋しそうだった。
7,8歳…気分に左右されやすく,友だちとのト ラブルが多かった。
9歳…妹とのあらそいがあると,常に「大きいく せに」と言われることが多かった。
10歳…仲間はずれをする傾向があったり,わがま まな行動があった。
ここ2年間ぐらい
- よく顔をしかめたり,目をパチパチさせたりすることがある。
- 憶病で,暗いところではトイレにも一人で行けず,電気を全部つけてから行く。
- 寝る時は,両親と一緒の時間に寝ようとしたり,背中をかいてとか母の手をさわりたがる
- 母と一緒に風呂に入ろうとする。
- 母のそばにすわりたがり,いつも一緒にいたがる。
- 母の居場所,存在,行き場所などをしつこく確かめることがあり,母親への甘え,依存的な態度が今でも残っている。
● 家族関係
祖父母がまだ家庭の中心ではあるが,子どもの養育は両親にまかされていた。
母親は,どちらかといえば自己中心的で,わがままなところがあり,養育も一貫したところがない。本人が学校で問題をおこしたりすると,そのことを過度に責めたり,感情的にあたりちらしたり,淋ずかしい思いをしたと本人に対して悪感情を抱いたりする。日ごろは放っておきながら,不安に思ったりすると子どもがうるさがるほど世話をしたり,手伝ってやったりする。また,口では「ばか」とか「だめ」とかいいながら,学業などについては内心気にしたり,さいそくしたり期待するなど矛盾したかかわりをする。子どもの教育やしつけについて,夫の考えと一致しないと感じており,不満に怒っている。時には子どもの前で,夫と言い争うことが多い。
今でも本人が抱っこをしてもらいたがったり, すり寄ったり,うしろから抱きついたりすると, 「なんだ,大きくなってー」と拒むことが多い。
父親は,本人から見ても静かでやさしい面が多い。夫婦が本人の前で言い争いをすると,夫の方