研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -019/066page
か遊ぶんじゃないよ。いいない」 ふりかえりの中で
Y子 「なんだか,いやだな。はっきり言えないけど,いやな気持ちです。そうです」 担任 「いやな気持ちね。そう,いやな気持ちって,どういうこと」 Y子 「うん,N子っておこりっぽいのかなぁ,ひがんでるのかなぁ,やっぱりいばっているんだ ね。ひねくれてるってもいうのか,いやだね,先生」
担任 「先生も,ちょっといやだったなぁ,人をどなりつけたり,いや味を言ったりするのってい やな気持ちだったね」 Y子 「T子ちゃんは遊びたかったんだよね。 遊びたいから来たんだよね。N子はなんで仲間に入 れようとしなかったんだろう。なんでなのかなぁ?」 8.考察
担任からの情報により母親が本人を認め,受容 し,喜んでいることとして本人にプラスのストロ ークを与えることで母子関係が改善されていった。
母親の話では,小さい時からあった「つめかみ」 が,本人が甘えたいそぶりがあった時には抱きし めてやったり,からだをさわってやったり,なで てやったりしたせいか,1学期の後半ごろからな くなってきたという。さらに,以前は,「大きい くせに」と妹の前などで言っていたが,いけない ことと思って言わないようにしているし,できる だけ本人の心の負担になるような言葉は避けるよ うにしているとも表明した。
父がほめてやったりすると,本人は自分からい ろいろとやろうとすることが多くなっているし, 妹の面どうをみることが多くなっていることが, 数少ない父の言葉からも聞かれた。
ロール・プレイングを通した指導では,友人関係がよく改善されている。なかなかとりかかりに くい指導であったが,道徳の授業や放課後に子ど もたち数人を入れたグループで何回か試みていく ことにより,本人もロール・プレイングのしかたを理解していった。
母親の成長した姿としては,母親が「若くして 子どもを生んだので,わからないことばかりだった が,今にして母親としてのあり方を痛感している」 と述べている言葉に認めることができる。
また,本人は,「まわりに気を使うようになっ た」「気をつけなくてはという気持ちを持つよう になった」と,自制する心の芽生えがみられるようになった。母子ともに成長の跡がみられる言葉 である。
いじめについては,いじめ,いじめられの当事 だけの指導にあたっていては根本的な解決にな らないので,担任は学級全体に働きかけることに 積極的に取り組んだ。
まず,仲間はずれ,いやがらせなどを見たり聞いたりした時は,機会をのがさず当人たちに個別 に会って話し,説諭した。そのあと,だれが当事者であるかわからないように,例え話や他の組の 話のようにして全体に対して指導をするようにした。その結果,指導していく過程で,女子集団の変容が見られるようになった。
「やんない方がいいよ」「やめな」という声が 特に男子に向けられるようになった。それが男子 の変容につながり,学級全体への変容とつながっ た。いじめを不正として見る目と,行動へ移して いく周囲の変容が,本人の変容にも結びつき,「まわりに気をつけなくては」という心の成長に結実 していった。
9.今後の課題
両親については,具体的なアプローチが情報を提供するという形でしかできなかった。家族問題へのかかわり方については,未婚である担任にとって難しい課題である。
友人関係は,はとんど改善されているが,自主性とか積極性という点では,まだまだ指導援助していかなければならない問題が残されている。