研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -020/066page
事 例 3 (中学校1)
怠学に陥った男子中学生の事例
1.主訴 怠 学
2.対象 中学校3年 男子,A男
3.問題の概要
中学2年生の11月ごろから,種々の反社会的行 動を行っている他校の中学2年生3人の仲間と交 際するようになり,3学期から3年生の1学期に かけて,次のような行動が発現した。
● 授業中に私語をしたり,席を離れることが目立ってきた。
● 学習意欲が低下し,学習成績が下がってきた。
● 他校の中学2年生Nら3人の仲間にそそのかされて,ときどき授業中に教室から抜け出すよ うになってきた。
● 朝の始業に遅刻するようになってきた。
● デパート徘徊や夜間外出が多くなってきた。
● Nらと共に万引きをしたり,喫煙,飲酒をするようになってきた。4.資料
(1)本人に関する資料
● 身体
身長,体重,体型ともに平均的である。
小学2年生のとき滑り台から転落して左腕を骨 折し,約1か月間通院治療をした。また中学1年 生のとき,自転車で転倒して右足を骨折し,約2 か月間入院治療をした。現在はそれらの後遺症は ない。● 知能・学業
・知能 数研式知能検査 知能偏差値 59 ・学業 小学5年生 数研式標準学力検査 国,算 平均学力偏差値 52 小学6年生 数研式標準学力検査 国,算 平均学力偏差値 54 中学2年生 数研式標準学力検査 国,社, 数,理,英 平均学力偏差値 45 ● 学習意欲
指導要録によれば,小学校では1〜6学年を通 して「積極的ではあるが,学習態度に落ち着きが ない。作業は乱雑である。」となっている。中学 校2年時には,「落ち着いて意欲的に学習に取り 組めば,向上が期待できる。」と記されている。
● 性格
指導要録によれば,小学校1〜6学年を通して 「落ち着きがない。いたずらが多く,友達に嫌わ れている。行動にけじめがなく,友達からの信頼 がない。」ということが指摘されている。中学生 になってからも,その性格,行動の傾向は同様で ある。
● 趣味・特技
- 書道塾に通っており,4段の資格を持つ。
- 熱帯魚の飼育をしている。
● 学校生活
- 授業に興味を示さず.勉強に集中できない。
- 教師に不信感をもっている。
- 進路が定まっておらず,将来の見通しが確かでない。
● 友人関係
中学2年生の1l月ごろ他校の中学2年生(Nら 3人仲間)とつき合うようになってから,それま で交際のあった級友たちが自然に離れてしまい, 中学3年生の4月現在,学校内では孤立している。
● 家庭生活
家に居たがらない。特に,父親が酒気を滞びて 家に居るときはいらいらしている。
小学3年生から5年生のころ酒気を滞びた父親