研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -021/066page

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に始終怒鳴られたり叩かれたりした。そんなとき 母親に甘えたが,母親は拒否的であった。

(2)家族に関する資料

● 家族構成

家族構成

● 家族の状況

 父親は普段は気が弱く,無口である。しかし,酒気を帯びると母親や子供をののしったり,叩いたりする。また父性性,男性性に欠け,判断力,決断力に乏しい。

 母親は父親に比べて教養が高く,上記のような 父親をふがいなく思っている。また見えを張ると ころがあり,父親との折り合いが悪いこともあっ て,PTAなどの対外的な行事に参加し,自分を 誇示しようとする面が見られる。父親に乱暴され たり,父親を頼りなく思ったりしていることから 母親は離婚を考え,たびたび実家に帰ったことも あった。

 妹は父親にかわいがられている。本人と妹との仲は良くない。

● 両親の養育態度

 父親は,A男が夜間勉強中,ブレーカーを切っ て停電させる(小学3年生時)とか,気にくわな いことがあると乱暴するなど,拒否的である。ま た父親らしく厳しく,大らかに接する姿が全く見 られない。いっしょに遊ぶ,作業をするというこ とも全くない。

 母親は,普段は気が弱く無口な父親(夫)を, 子供たちの前でなじったり,愚痴をいうことがた びたびである。そして,父親が頼りないというこ とから,知能が優れている良男A男に対し,「お 前が頼りなんだから…」「勉強すればできる…」 「必ず,いい高校に入学するようにがんばって…」 など,過剰な期待をかけるようになった。

 両親ともに,養育の態度に矛盾,不一致の傾向が見られる。また,「人としてこうすべきだ。こうしてはいけない」など,規範性を育てる親の姿勢が欠けている。

● 家族関係

・A男が描いた家族画

家族構成

 全体的な印象として,家族の雰囲気が殺ばつとしていて,家族の一人一人が不満を抱いているように感じられる家族画である。

 画面中央に両足を投げ出しているのが父親である。酒に酔って家族を怒鳴り散らしているときの父親の姿であるという。

 角縁の眼鏡をかけ,父親の左側に座っているのが母親である。子供の前で父親をなじっているときの母親の姿であるという。

 父の右隣に立っているのが妹である。この表情は,ののしり合う父母に対する妹の強い反抗心を描いたものであるという。

 父親の右,画面の左隅に立っているのがA男で ある。父親に怒鳴られ,母親に拒否されている「私」 であるという。

5.診断

 仲の悪い両親の下で,A男は絶えず情緒不安完の状態で育った。そのため,小学校に入学してからは,優れた知能を持ちながらも生活態度に落ち着きがなく,学習成績は振るわなかった。

 普段は小心で父性性に欠けているが,酒気を帯びると乱暴になる父親(夫)に不満とあきらめを抱いた母親は,長男A男に期待をかけ,過度な学習刺激を与えるようになった。A男は母親の期待にこたえようとしたが,情緒の不安定から思うように学習成績が上がらず.次第に学習不適応に陥


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