研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -024/066page
男はその係になった。
● A男は知能が高いこと,現在はその知能を十分に発揮していないこと,などを話して聞かせ た。これらの指導援助の結果,A男は,学級の伺育 係としてその趣味を積極的に生かし,級友に認め られて,学級への所属感も高まった。また教師集団 から積極的に温かい言葉かけをされることにより 生活態度が生き生きとしてきた。遅刻も全くなく なり,清掃などもよくやるようになった。そして 学習部に所属し朝自習の世話をするなど,積極的に学級に奉仕するようになった。
[3] 交友関係の改善を図る
授業を抜け出して,他校の反社会的行動をとる生徒たちと行動を共にする姿が見られたことから 担任が面接相談を進めた。
担任 「どんなことからNら3人仲間とつき合うようになったの?」 A男 「家にいると父に文句を言われるし,母は勉 強以外のことは何も言わない。家が面白くない。 また学級には話し相手が一人もいない。前はB 君とつき合っていたが,勉強ができる彼は高校 受験の勉強に忙しいとかで,このどろはつき合っていない。 そんなある日曜日,B君の家へ遊びに行く途中で,たまたまNらに出会った。彼らはいろい ろ面白い話をしてくれた。それからNらに誘わ れるようになり3人仲間とつき合うになった」 担任「Nらとどんなことをしているの?」 A男「ときどき夜遊びをしている。デパートを歩 き回っている。万引きをさせられた。トイレで たばこを吸ったり,チユーハイを飲んだことも ある」 担任 「そのときはどんな気分だった?」 A男 「Nらといっしょに話しているときはとても面白い。でも,万引きをさせられたときはとてもいやだった。たばこも酒も好きでない。そん なときはNらとつき合いたくないと思う。でも,急につき合いを止めたりしたら,Nらに何といわれるかわからない……こわい」 担任 「先生が味方になるよ……心配するな。君が何か悪いことをさせられるとき,悪いと思ったときは,勇気を出して断るように努めること。 Nとつき合うときは,しっかりした心をもっ て……」 このような面接相談をしてから,A男は,Nらとのつき合いが慎重になり,少なくなってきた。
しかし,中学3年生の5月,野外写生の時間に授業を抜け出し,学校近辺の神社の境内でNらと 遊んでいた。それが校長の目に止まり,校長の指導を受けた。その直後に担任が面接した。
担任 「校長先生のお話をどう思う?」
A男 「心から話してくれた。深く反省している」
担任 「Nらとのつき合いを断っていたときの気持ちはどうだった?」
A男 「せいせいした気分でいられた。でも,学校にはだれも話し相手がいなくてつまらない」
担任 「Nらとのつき合いを避けていた努力はりっぱ。それに,話し相手がいなくて……というが, Bに声をかけてみてはどうか」(担任はBには,前もって話しておいた。) その後しばらくしてから,A男とBが共に行動する姿が見受けられるようになった。学級の中で A男の表情が明るくなってきた。
(2)規範性を育てる指導援助
[1] 自分の生活を反省させ,規範を教える
担任 「自分の生活について,いつ,何をしているかを見つめてみよう」
A男 「ときどき家をだまって出て,夜遊びをしている。朝寝妨をしてしまう。遅刻する。たまに授業を抜け出す。万引きをした。たばこを吸っ た。このままでおれ,だめになりそう…」
この後担任は,夜遊びの害,授業を抜け出すこ との損失,喫煙の害などについて具体的に教えた。