研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -025/066page
[2] 両親が規範を示す
● 両親が出勤,帰宅の時刻を守る。
● 母親は食事の世話をきちんとする。外出からの帰宅時刻を守る。
● 善・悪のけじめをきちんとつける生活態度を 示す。良い点を認め,ほめるとともに,悪い点 をきちんと指摘するようにする。その結果,A男は夜遊びが少なくなった。変形 ズボンをはかなくなった。たばこを吸わなくなっ た。宿題を忘れない,遅刻をしないなど,規則を 守って生活する姿が見られるようになってきた。
(3)学習意欲を高める指導援助
[1] 学習意欲検査に基づく指導援助
学習意欲検査の結果に基づいて,学習への取り組みに対する長所と努力点を指摘した。
● 長所
- 失敗を恐れずに学習に取り組む姿が見られることは,学力向上のために大切である。
- 勉強の必要性を強く感じている姿が見られるので学力の向上が期待できる。
● 努力点
- 教師や親,友達からの指導や援助を素直に受け入れるようにすれば学習成績は伸びる。
- 目標をもち,自分で計画を立てて学習に取り組み,目標を達成するよう努力すれば,学力の向上が期待できる。
● 努力点を具体化する
- 国語,数学,英語の3教科の豆テストを毎日行い,できる喜びを味わわせ続けることによ り,学習意欲を高めるよう試みた。
- 週,月,学期の学習目標を具体的にもたせ,それを達成するための計画を立てさせた。その際,達成可能な学習内容を計画化するようにした。また,計画を実施している様子を承認し,賞賛,奨励を与えた。
[2] 進路の目あてを具体的にもたせる
● A男の将来の希望を聞く―「動物や植物の飼育栽培のような仕事をしたい」
● A男の適性,趣味などを明らかにする―「科学が好き,熱帯魚の飼育をしている」
● 進路の目あては―「大学に行きたいので,普通科のある高校に進学する」8.考察
指導援助の結果,次のような変容がみられた。
(1) 情緒的安定の状態
● 授業中の学習態度がまじめで落ち着いてきた。
● 気分が安定し,両親に口答えをしなくなった。
● 教師や級友とうまくかかわれるようになった。(2)規範性の状態
● 万引き,喫煙,飲酒などが無くなった。
● 無断で夜間外出をしない,帰宅時刻を守るなど,生活が規律的になってきた。(3)学習意欲の状態―学習意欲検査の変容
A男のこれらの変容は,次のような指導接助の 効果によるものと考えられる。
● A男の問題行動を正しく理解するための適切な資料を収集し,その解釈を的確に進め,指導 援助の方法を具体化したこと
● 担任がその指導援助の方法によって,本人及び両親に対して,たびたび家庭訪問を行い,面 接相談を進めたこと
● 本人と両親が担任の指導援助を受け入れ,特に養育態度を受容的,肯定的に改めてA男に接 したこと