研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -027/066page

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● 「自分は駄目だ」「何をやってもよくできない」「他人からよく思われていない」「本当は〜なんだけど,しかし…」などの発言が多い。

● 集団行動の時,声がかん高くなる。

● 羞私心やプライドを失いかけている。

● 授業は勿論,集会などで長い時間同じ姿勢を保つことができなく,絶えず疲労感を訴える。

● 教師からやさしい声をかけられたりすると,その教師に身をすり寄せていく。

● 家庭環境に問題がある。家庭の中で親身になってくれる人がいない。

● A子が3人のグループのリーダーである。

(5)学級の実態

● 人数 44名(男子24名,女子20名)

● 学級担任 男子,50才,国語科,3年生から担任

● 学級の雰囲気など

5.診断

 生育歴や家庭環境など諸条件の異なる3人の生徒の問題行動を全く同じとらえ方をする危険を承知で診断すれば,次のように要約できるであろう。

(1)いずれの親もあたたかで親身になった育て方が不足していた。したがって3人とも慢性的な愛情飢餓の状態にあり,それによって種々の注意牽引行動を引き起こしたり,集団をつくり同じ行動をすることによって満足感を得ている。

(2)幼少時から,家庭や地域そして学校においても非常に少ない人間関係あるいは交友関係きり持てなかったために,自他を比較しての自己解釈の機会を持つことが不足していた。その結果,年齢相応の規範性や社会性が十分に身についていない。

(3)小学校中学年ころからすでにアンダーアチーバーで学習不適応の状態に陥っていたにもかかわらず適切な援助の手が差しのべられて来なかった。それでありながら,成績が悪いことで行動面でも適切な評価が与えられることが少なく,反対に絶えず小言や叱責を受けて来たため,否定的な自己概念を持つとともに,親や教師に強い反感や不信感を抱いている。

(4)真剣に取り組む対象を持たないので,将来の展望を模索することもなく,自らの問題を意識化することもない。

(5)しかしながら,3人がともに行動することによって,より深刻な問題行動に進むことが避けられている。

6.指導仮説

(1)生徒たちに対して

 指導援助の目標は,一つ一つの問題行動を指摘して細かな注意を与えることではなく,本人たちの自己概念(self−image)の変更である。

そのために次のことを行う。

● 節度のある協同的な学級づくりに努める。そしてよい集団のもつ自浄作用の中に取り込む。

● 可能な限り接触の機会を多く持ち,常に肯定的な言葉かけや評価を行う。

● 父性的役割を持つ教師は規範性を育て,母性的投割を持つ教師は女らしさを身につけさせるなど,教師集団が連携して指導にあたり,信頼関係を深めながら調和のとれた性格像を形成させていく。

● 能力と学力に応じた学習プログラムをともにつくり,総統的に援助し進路を開かせていく。

(2) 家庭に対して

 学級懇談や家庭訪問時に,親の役割を自覚し子


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